生前整理・終活ガイド

介護保険申請の流れ完全ガイド|要介護認定までの全7ステップと家族が知っておきたい準備

介護保険申請の流れ完全ガイド|要介護認定

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の要介護認定区分の見通しや、特定の給付額・サービス内容を断定するものではありません。手続きの詳細や個別事情については、地域包括支援センター・ケアマネジャー・市区町村介護保険担当課にご相談ください。

「最近、親の様子がいつもと違う」「転倒が増えた」「料理の手順が分からなくなってきた」——そんな変化に気づいたとき、多くのご家族が「介護保険を使えるのかな」と思いながら、何から手をつけていいか分からず立ち止まってしまいます。申請の流れが複雑そうで怖い、という気持ちはごく自然なことです。この記事では、介護保険の申請から要介護認定・サービス利用開始までの全7ステップを、はじめての方にも分かるよう順に解説します。

介護保険申請を急ぎたいタイミング——親の異変サインを見逃さないために

介護保険のサービスを使い始めるためには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。認定が下りるまでには、申請から通常30日程度かかります。「もう少し様子を見てから」と後回しにしている間に状態が急変するケースも少なくないため、以下のサインが複数あてはまる場合は、早めに動き出すことをおすすめします。

  • 転倒や骨折が増えた、あるいは一度起き上がれなくなった
  • 料理・洗濯・買い物など日常生活の一部が難しくなってきた
  • 同じことを何度も聞く、最近の出来事が思い出せないことが増えた
  • 服薬管理が難しくなってきた(飲み忘れ・二重服用)
  • 体重が急激に減少した、食事量が目に見えて減った
  • 外出を嫌がるようになった、友人・近所との交流が急減した

これらは「ちょっとした変化」ではなく、介護保険の対象となる可能性を示すサインです。親御さん自身が「まだ大丈夫」とおっしゃることも多いですが、申請自体は本人の意思確認ができる状態のうちに進めておくと、その後の手続きがずっとスムーズになります。

介護保険申請の全7ステップ——全体像をつかもう

介護保険の申請から実際にサービスを使えるようになるまでの流れを、7つのステップで整理しました。全体を把握しておくと、「今どこにいるのか」が分かり、焦らず進められます。

  1. 市区町村窓口(または地域包括支援センター)への申請
  2. 主治医への意見書作成依頼(自治体が直接依頼するケースが大半)
  3. 認定調査(調査員が自宅等を訪問)
  4. 一次判定(コンピューター判定)
  5. 二次判定(介護認定審査会による審査)
  6. 認定結果の通知(申請から原則30日以内)
  7. ケアプラン作成・サービス利用開始

厚生労働省「介護保険制度」の案内でも示されているように、申請から認定通知までの標準処理期間は原則30日以内ですが、書類の準備状況や地域によって前後することがあります。余裕をもって動き始めることが大切です。

ステップ詳細①:市区町村窓口での申請——必要書類と代理申請

申請窓口は、お住まいの市区町村の介護保険担当課、または地域包括支援センターです。本人または家族・ケアマネジャーなどが代理で申請することもできます。遠方に住んでいて窓口へ直接行けない場合も、郵送申請に対応している自治体が多いので、担当課に事前に確認してみることをおすすめします。

申請時に準備するもの(一般的な例)

  • 介護保険被保険者証(65歳以上の方には交付済み)
  • 要介護認定申請書(窓口または自治体Webサイトから入手)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
  • 主治医の氏名・医療機関名・所在地(意見書作成依頼に必要)

40〜64歳の方(第2号被保険者)が申請する場合は、医療保険の被保険者証も必要です。また、住民票が別の市区町村にある場合や施設入居中の方は、申請先が異なることがありますので注意が必要です。

「書類が多くて大変そう」と感じる方も多いですが、地域包括支援センターでは申請のサポートをしています。書き方に迷ったら、まずセンターに相談してみることをおすすめします。

代理申請について

本人が窓口に来られない場合でも、家族・成年後見人・地域包括支援センターのスタッフ・居宅介護支援事業者などが代理で申請できます。遠距離介護の状況にある方も、代理申請を活用することで手続きを進められます。

ステップ詳細②:認定調査と主治医意見書——74項目の聞き取りとは

申請後、市区町村から派遣された調査員(多くの場合、介護支援専門員や市区町村の職員)が、本人のいる場所(自宅・病院・施設等)を訪問して「認定調査」を行います。

認定調査の74項目

調査では、全国共通の「認定調査票」に基づき、以下のような74項目の心身の状況を聞き取ります。

  • 身体機能・起居動作:寝返り・起き上がり・座位保持・歩行・入浴・排泄動作など
  • 生活機能:食事摂取・衣類の着脱・洗顔・整髪など
  • 認知機能:意思の伝達・毎日の日課の理解・生年月日や年齢の回答など
  • 精神・行動障害:被害的な発言・不潔行為・徘徊・暴言などの有無
  • 社会生活への適応:薬の内服管理・金銭の管理・日常の意思決定など
  • 特別な医療:点滴・透析・酸素療法などの医療処置の有無

調査当日は、普段の状態をありのままに伝えることが大切です。「よそ行き」の姿を見せようとすると、実態より軽い判定につながることがあります。ご本人が自分を過小評価しがちな場合は、家族が同席して補足することもできます。

主治医意見書について

認定調査と並行して、主治医が「主治医意見書」を作成します。この書類は市区町村が直接主治医に依頼するため、家族が書類を受け取りに行く必要は基本的にありません。かかりつけ医がいない場合は、申請前に受診しておくことをおすすめします。

ここで一つお伝えしたいことがあります。認定調査の場面では、本人がご自分の日常生活をうまく言葉にできないことがあります。介護が始まる前に、ご本人と「人生振り返りノート」のような形で思い出や日常のエピソードを共有しておくと、調査員への説明がスムーズになることがあります。親御さんの「自分の言葉で伝える力」を引き出すためにも、日頃からの対話の積み重ねが助けになります。

ステップ詳細③:一次・二次判定と要介護認定——要支援1〜要介護5の違い

認定調査の結果と主治医意見書をもとに、まずコンピューターによる「一次判定」が行われます。その後、医師・保健師・福祉専門職などで構成される「介護認定審査会」が一次判定を踏まえて「二次判定」を行い、最終的な要介護認定区分が決まります。

認定区分と目安

  • 非該当(自立):介護保険のサービスは利用できない状態(地域支援事業は利用可)
  • 要支援1・2:日常生活はほぼ自分でできるが、一部に支援が必要な状態
  • 要介護1・2:立ち上がりや歩行に一部介助が必要。認知機能の低下も見られることがある
  • 要介護3:排泄・入浴・衣服の着脱などに全面的な介助が必要
  • 要介護4・5:日常生活のほぼ全般にわたって介助が必要な状態

なお、認定区分はあくまで目安であり、実際の生活状況や医療的背景によって異なります。「この状態なら○区分になる」と断定することはできませんので、認定結果に疑問がある場合は審査請求(不服申し立て)や区分変更申請の制度があることを覚えておいてください。弁護士・ケアマネジャーにご相談いただくと、手続きの進め方を丁寧に教えてもらえます。

認定結果が届くまでの期間

厚生労働省の定める標準処理期間は申請から30日以内ですが、年度末など申請が集中する時期は1〜2カ月かかるケースもあります。急を要する状態の場合は、申請時に「暫定ケアプラン」でサービスを先行利用できる制度もありますので、窓口に相談してみることをおすすめします。

ステップ詳細④:ケアプラン作成とサービス利用開始——認定後の具体的な流れ

認定区分が決まったら、次はサービスの内容・頻度・事業者を定めた「ケアプラン(介護サービス計画書)」の作成です。

要介護1〜5の場合

居宅介護支援事業所のケアマネジャーに依頼してケアプランを作成します。ケアマネジャーへの費用は全額介護保険から給付されるため、利用者の自己負担はありません。複数のケアマネジャーに相談したうえで担当者を選ぶことができます。

要支援1・2の場合

地域包括支援センターが中心となり「介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)」を作成します。訪問介護・デイサービス(通所介護)・福祉用具のレンタルなど、介護予防に特化したサービスが利用できます。

利用者負担割合

サービス利用時の自己負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。負担割合は認定結果と同時に「介護保険負担割合証」で通知されます。詳細な計算や個別の負担額については、担当のケアマネジャーや市区町村窓口にご確認ください。

介護離職を防ぐ家族の準備——生前整理との並行で、今できることを

介護が始まると、仕事を続けながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」の問題が浮上します。仕事を急に辞めてしまうと、収入の喪失・老後の年金への影響・再就職の困難など、長期的に家族全体が苦しくなるリスクがあります。介護保険のサービスを適切に活用することで、在宅介護と就労を両立できる環境を整えることが大切です。

介護離職を防ぐための5つの準備

  1. 早めに申請する:状態が軽いうちに申請・認定を受けておくと、サービス利用の選択肢が広がる
  2. 職場の介護休業制度を把握する:介護休業は最大93日間(分割取得可)。申請前に人事部門に確認を
  3. 地域の社会資源を知る:ショートステイ・デイサービス・夜間対応型訪問介護など、組み合わせることで在宅介護が継続しやすくなる
  4. 兄弟姉妹・親族と役割分担を話し合う:介護の担い手が一人に集中しないよう、早い段階から話し合いの場をもつ
  5. 本人の意向を事前に聞いておく:「施設か在宅か」「延命措置をどう考えるか」など、元気なうちに本人の希望を確認しておくと、いざというときに迷いが少なくなる

「親の介護の準備」と「生前整理」は、実は切り離せない関係にあります。親御さんが元気なうちに、大切にしているものを一緒に整理したり、思い出の品に触れながら話をしたりする時間が、介護が本格化したときの「本人の意向を知っている」という安心感につながります。

親御さんが長年大切にしてきた「思い入れ箱」——ご本人だけが意味を知っている写真や手紙、記念の品を一つの箱に収めておく——をご一緒に作っておくことで、介護が始まった後もその方らしさを尊重したサポートができます。ものを整理することは、亡くなった後の遺品整理のためではなく、これから先もその方が「自分の人生を生きている」と感じられるための作業です。

生前整理や親の介護準備についての全体的な流れは、親の介護準備ガイドもあわせてご覧ください。また、何から手をつけていいか分からないときは、生前整理チェックリストが最初の一歩に役立ちます。

なお、エンディングノートを通じて本人の意向を記録しておく方法については、エンディングノートの書き方ガイドで詳しく解説しています。

介護保険の申請は、親の介護全体への備えの入口です。介護生活の全体像を把握しておきたい方は親の介護を始めるためのガイドもあわせてご覧ください。認知症が疑われる段階から動き始めたい場合は親の認知症・介護の準備ガイド、介護分担で家族間のすれ違いが気になる場合は親の介護と兄弟不公平の解消策もあわせて参考にしてみてください。

まとめ——一歩を踏み出すことが、家族全員を助けます

介護保険の申請は、複雑に見えても、一つひとつのステップを踏んでいけば着実に前に進めます。この記事で解説した全7ステップをあらためて確認しましょう。

  1. 市区町村窓口または地域包括支援センターへの申請
  2. 主治医への意見書作成依頼(自治体から直接依頼)
  3. 認定調査(訪問による74項目の聞き取り)
  4. 一次判定(コンピューター判定)
  5. 二次判定(介護認定審査会)
  6. 認定結果の通知(原則30日以内)
  7. ケアプラン作成・サービス利用開始

「まだ大丈夫」「もう少し様子を見てから」という気持ちはとても自然です。しかし、介護保険は申請してから結果が出るまでに時間がかかります。今日動き出すことで、いざというときに備えられる選択肢が広がります。

手続きの疑問点や、「どこに相談すればいいか分からない」という場合は、まずお住まいの地域の地域包括支援センター・ケアマネジャー・市区町村介護保険担当課にご相談ください。相談自体は無料で、専門のスタッフが一緒に考えてくれます。

介護という新しい局面を、ご家族が一丸となって乗り越えていくための第一歩として、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

参考:厚生労働省「介護保険制度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html

本記事の監修:村上充恵(介護離職予防コンサルタント・認定講師)/編集:生前整理支援センター ふれあいの丘(代表・大久保亮佑、生前整理アドバイザー2級)

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この記事の監修者

村上 充恵

生前整理普及協会 認定指導員/AFP/介護離職防止対策アドバイザー/神奈川大学エクステンション講座 講師

株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」運営。実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。監修者プロフィール →

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