墓じまいの流れ7ステップ|費用・必要書類・離檀料
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「お墓を守る人がいなくなる」「遠方のお墓に行けなくなってきた」という不安を抱えながら、何から始めればよいかわからずにいる方は少なくありません。この記事では、墓じまいの全7ステップ、改葬許可証の取り方、費用を比べる観点、離檀料をめぐる考え方を、公的統計と調査データにもとづいて整理します。
墓じまいが増えている背景——改葬件数は10年で約2.1倍
改葬(お墓の引っ越し)の件数は、厚生労働省「衛生行政報告例」によると2024年度(令和6年度)に176,105件となり、10年前の2014年度(平成26年度)の83,574件から約2.1倍に増えました。前年度の2023年度(令和5年度)は166,886件で、増加傾向が続いています(出典:厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」/e-Stat 第4章 生活衛生 第6表「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数」)。
増加の背景には、主に3つの社会的変化があります。
- 少子化・核家族化:子どもが1人または0人という家庭が増え、「誰がお墓を継ぐのか」という問題が深刻化しています。
- 遠方居住・Uターン減少:地方に先祖代々のお墓があっても、子どもが都市部に移り住み、頻繁なお墓参りが難しくなっています。
- 後継者不在:独身・未婚・子なし世帯の増加により、現実的にお墓を管理する人がいない状況が生まれています。
墓じまいを検討した理由を尋ねた民間調査でも、「お墓が遠方にあること」が52.0%、「継承者がいないこと」が44.1%で上位を占めています(出典:株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年1月実施・有効回答733件。同社が運営する「いいお墓」の利用者を対象とした調査です)。
「自分の代では大丈夫だけれど、子どもや孫に負担をかけたくない」という思いから、元気なうちに墓じまいを決断する方も増えています。墓じまいは先祖を粗末にすることではなく、次の世代への思いやりとしてとらえる方が多くなってきました。
墓じまいの本質は、「ご先祖への敬意を保ちながら、無理なく続けられる供養の形に移行すること」です。生前整理の観点からも、自分の判断力があるうちに準備しておくことが、家族全員の安心につながります。詳しくは終活とは?何をする・いつから始める・生前整理との違いもあわせてご覧ください。
墓じまいの7ステップ全体像
墓じまいは、親族と菩提寺の合意形成から始まり、改葬先の決定、3種類の書類の取得、墓石の撤去、新しい供養先への納骨という7つのステップで進みます。複数の関係者と行政手続きが絡むため、全体の流れを先に把握しておくことがトラブル防止の第一歩です。
- 親族・菩提寺との合意形成
- 遺骨の新しい供養先(改葬先)を決める
- 改葬先から「受入証明書」を取得する
- 現在の墓地管理者(寺院・霊園)から「埋葬証明書」を取得する
- 市区町村役場に「改葬許可申請書」を提出し「改葬許可証」を取得する
- 石材店に墓石の撤去・原状回復工事を依頼する
- 遺骨を新しい供養先へ移し、閉眼供養・開眼供養を行う
役所への手続きは「改葬許可証」の取得が核心です。墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第5条は、「埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む)の許可を受けなければならない」と定めています(出典:e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」/厚生労働省「墓地・埋葬等のページ」)。許可なしに遺骨を移動することはできないため、手続きの順番を守ることが重要です。
ステップ詳細① 親族・菩提寺との合意形成と離檀料
墓じまいで最初につまずきやすいのが、親族や菩提寺との話し合いです。「先祖代々のお墓をなくすことへの抵抗感」は世代によって大きく異なるため、合意形成をていねいに進めることが、後々のトラブル防止に直結します。
親族間の合意形成のポイント
- お墓の「祭祀承継者」(お墓の名義人)が中心となって話を進める
- 遠方に住む親戚を含め、早めに情報共有する
- 「なぜ墓じまいが必要なのか」の理由を丁寧に説明し、全員の合意を得ることをめざす
- 合意が得られない場合は、弁護士や行政書士への相談も選択肢のひとつです
菩提寺への相談と離檀料について
菩提寺(お寺のお墓に埋葬されている場合)に墓じまいの意向を伝えることは、最も慎重さが必要な場面のひとつです。寺院とのご縁を終わらせる「離檀」にあたり、「離檀料」を求められることがあります。
離檀料とは、長年お世話になった寺院への感謝とお礼の意味合いを持つものです。法的な支払い義務があるわけではなく、金額を定めた法令もありません。円滑に話を進めるために、誠実な姿勢で相談することをおすすめします。
離檀料の金額は、地域・宗派・寺院との関係性によって大きく異なり、公的な統計も存在しません。「いくらが相場か」を外から決めることはできないため、菩提寺に直接うかがい、金額と支払い方法を書面で確認するのが確実です。高額な請求を受けて困っている場合は、弁護士や行政書士にご相談ください。
ステップ詳細② 改葬許可証の取得手続き
改葬許可証は、遺骨を別の場所へ移すために市区町村役場から発行してもらう許可証です。改葬許可申請書に、現在の墓地管理者が発行する埋葬(収蔵)証明書などを添えて申請します。改葬先の受入証明書を添付書類として求めるかどうかは市区町村によって異なり、大阪市などは必要とし、横浜市・名古屋市・福岡市の案内には記載がありません(各市の公式案内・2026年9月30日確認)。申請先の自治体で必要書類を確認してください。自治体ごとの違いと記載項目は改葬許可申請書の書き方|記載項目と改葬許可証の流れで整理しています。
必要書類の全体像
- 埋葬証明書:現在の墓地管理者(寺院または霊園)に発行してもらいます。「確かにこの遺骨がここに埋葬されている」ことを証明する書類です。
- 受入証明書:新しい供養先(改葬先)から発行してもらいます。「この遺骨を受け入れます」という証明書です。添付を求めない自治体もあるため、申請先で確認します。
- 改葬許可申請書:市区町村役場の窓口で入手します(自治体によってはホームページからダウンロード可能)。埋葬証明書・受入証明書を添えて提出します。
手続きで間違えやすい4点
- 改葬許可申請書は、遺骨1体につき1枚が原則です(複数の遺骨がある場合は複数枚必要)。
- 手続きを行う市区町村は、現在お墓がある自治体です。墓地、埋葬等に関する法律第5条第2項は、改葬の許可を「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」が行うと定めています(改葬先の自治体ではありません)。
- 書類の様式・必要事項は自治体によって異なる場合がありますので、事前に窓口に確認することをおすすめします。
- 手数料は無料〜数百円程度の自治体が多いものの、金額は自治体によって異なります。
改葬許可証が発行されたら、石材店による墓石撤去工事の前後に、新しい供養先へ提出します。改葬許可証がなければ、新しい供養先での受け入れができません。手続きの順番を守って進めることが大切です。実際に墓じまいをした方が「大変だった」と答えた上位も、改葬先選び38.8%、役所の手続き32.3%でした(鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」)。
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墓石の撤去費用は、石材店ごとに見積もりが違います
墓じまいの費用のうち、墓石の撤去・整地にかかる部分は石材店に見積もりを出してもらって確かめます。墓石ナビは、見積もりを依頼したい内容として「墓じまいをしたい」を選べる一括見積もりサービスです。複数の石材店の条件を並べて比べたいときに使えます。
- 撤去する区画の広さと、墓石の大きさ・基数
- 重機が入れるか(入れない場合の作業方法)
- 整地して返還するまで含まれるか
- 見積もりに含まれない費用の範囲
石材店の一括見積もりサービス「墓石ナビ」の公式サイトへ移動します
ステップ詳細③ 遺骨の新しい供養先を選ぶ
遺骨の新しい供養先は、永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨・手元供養の5つが主な選択肢です。継承者が必要か、参拝場所が残るか、個別に安置される期間はどれくらいかという3点で比べると、家族の状況に合う方法が絞り込めます。
実際の改葬先の内訳は、永代供養(合祀・合葬墓)が43.2%で最も多く、樹木葬24.1%、一般墓14.3%、納骨堂13.3%と続きます(鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年)。約8割が継承者を必要としない供養の形を選んでいます。
永代供養墓・合祀墓
寺院や霊園が永続的に管理・供養してくれるお墓です。後継者がいなくても任せられることが最大のメリットです。他の方の遺骨と一緒に埋葬される「合祀型」と、一定期間は個別に安置される「個別型」があり、個別安置の年数と管理費の有無によって費用が変わります。
樹木葬
墓石の代わりに樹木や草花を墓標とする埋葬方法です。自然に還るイメージが好まれ、近年選ぶ方が増えています。里山型(山林の中)と都市型(霊園内の区画)があり、区画の広さ・使用期間・合祀に移すまでの年数で費用が変わります。
納骨堂
屋内施設で遺骨を保管する方法です。ロッカー型・仏壇型・自動搬送型などがあり、交通の便が良い都市部に多く設置されています。雨天でも参拝できる点も利点のひとつです。設備の形式・立地・使用期間・年間管理費の有無で費用が変わります。
散骨
遺骨を粉状に砕いたうえで、海や山などに撒く方法です。厚生労働省は「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」で、焼骨を視認できない粉状に砕くこと、契約は文書で行い費用の明細書を添付することなどを事業者に求めています(出典:厚生労働省「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」)。条例で規制している自治体もあるため、散骨の方法と費用|海洋・山林の選び方もあわせてご確認ください。
手元供養
遺骨の一部を小さな骨壺やアクセサリーに納めて、自宅で手元に置いて供養する方法です。残りの遺骨は永代供養墓や散骨にするケースも多くあります。「常に身近に置いておきたい」という気持ちを大切にできる選択肢です。
どの供養先が合っているかは、費用・アクセス・価値観・宗教観によって異なります。複数の施設を見学・比較することをおすすめします。墓じまいを機に、写真や形見をベストショットアルバムや思い出箱として整えておくと、ご先祖との心の繋がりを未来に残せます。お焚き上げを検討される方はお焚き上げサービスの選び方もご参照ください。
費用の内訳と、実際にかかった金額の分布
墓じまいの費用は、閉眼供養のお布施・離檀料・墓石の撤去工事費・改葬手続き費用・新しい供養先への費用という5つに分かれます。お墓の面積・立地・墓石の量・改葬先の種類によって総額が変わるため、内訳ごとに条件をそろえて見積もりを取ることが比較の基本になります。
費用の主な内訳と、金額が変わる条件
- 閉眼供養(魂抜き)のお布施:菩提寺の僧侶に依頼します。お布施は宗派・寺院・地域によって考え方が異なり、決まった金額はありません。菩提寺に直接うかがうのが確実です。
- 離檀料:寺院との話し合いによって決まります。法的な支払い義務はなく、公的な統計もありません。
- 墓石の撤去・原状回復工事費:区画の面積、墓石・外柵の量、重機が入れるか、階段や坂を手作業で運ぶ必要があるかによって大きく変わります。同じ条件で複数の石材店から相見積もりを取ると比べやすくなります。
- 改葬手続き費用:役所の申請手数料は無料〜数百円の自治体が多く、行政書士に代行依頼する場合は別途費用が発生します。
- 新しい供養先への費用:永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨のどれを選ぶか、個別に安置する期間、年間管理費の有無で変わります。
実際にかかった費用の分布(2026年調査)
墓じまいを実施した方に実際の費用を尋ねた調査では、「31万円〜70万円」が31.3%で最も多く、全体の約48%が70万円以下で完了しています。一方で30万円以下が16.8%、151万円以上も14.0%あり、条件によって金額に大きな開きが出ることがわかります(出典:株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年1月16〜23日実施・有効回答733件)。
調査は「いいお墓」の利用者を対象としたもので、全国の平均値ではありません。墓石の規模が大きい、寺院墓地である、改葬先を個別型の納骨堂にするといった条件が重なれば、金額はさらに上がります。複数の石材店・供養先に同じ条件で見積もりを依頼し、内訳を並べて比較することをおすすめします。
費用の負担が気になる方は、生前整理チェックリストで全体の優先順位を整理してから取りかかると、無理のない計画が立てやすくなります。
墓じまいでよくあるトラブルと回避策
墓じまいで起きやすいトラブルは、親族の反対・離檀料の高額請求・石材店選びの失敗・手続きの順番の誤りの4つです。いずれも、早い段階での情報共有と書面での確認によって、多くのケースは回避できます。
トラブル① 親族の反対・合意が得られない
「先祖のお墓をなくすなんて」と強硬に反対する親戚がいるケースは珍しくありません。特に疎遠だった親族ほど反発が強い場合があります。
回避策:早い段階で関係者全員に情報共有し、「なぜ墓じまいが必要なのか」を丁寧に説明しましょう。新しい供養先を一緒に選ぶプロセスに参加してもらうことで、当事者意識が生まれることがあります。
トラブル② 離檀料の高額請求
寺院から高額な離檀料を請求されたというケースがあります。離檀料に法的な支払い義務はなく、金額も法令で定められていません。
回避策:「払えない」と一方的に伝えるのではなく、誠意を持って対話することが基本です。話し合いが難航する場合は、弁護士や行政書士に相談することをおすすめします。
トラブル③ 石材店選びの失敗
高額な工事費を請求されたり、工事後に墓地が荒れた状態で放置されたりするケースがあります。
回避策:複数の石材店から、同じ条件で相見積もりを取りましょう。墓地管理者(寺院・霊園)に紹介してもらった石材店であれば、一定の信頼がおけることが多いです。
トラブル④ 手続きの順番を誤る
改葬許可証を取得する前に墓石を撤去してしまったり、遺骨を勝手に移動してしまったりするケースがあります。墓地、埋葬等に関する法律に違反する行為となるため、正しい手順を踏むことが大切です。
回避策:この記事の7ステップの順序を守ってください。不安な点は、自治体の墓地担当課や行政書士に確認することをおすすめします。
墓じまいと合わせて仏壇・仏具の処分を検討されている方は、仏壇・仏具の処分方法と費用ガイドもご覧ください。永代供養先の選択や葬儀社との連携については後悔しない葬儀社の選び方も参考になります。
まとめ
墓じまいは「先祖を大切にしないこと」ではありません。時代や家族の状況が変わるなかで、無理なく続けられる供養の形を選ぶことは、ご先祖への敬意を次の世代へつなぐことでもあります。改葬件数が10年で約2.1倍に増えたという公的統計も、墓じまいがすでに一般的な選択肢のひとつになっていることを示しています。
改めて7つのステップを振り返ります。
- 親族・菩提寺との合意形成
- 新しい供養先を選ぶ
- 改葬先から受入証明書を取得する
- 現在の墓地管理者から埋葬証明書を取得する
- 市区町村役場に改葬許可申請書を提出し改葬許可証を取得する
- 石材店に墓石の撤去・原状回復工事を依頼する
- 遺骨を新しい供養先へ移し、閉眼供養・開眼供養を行う
本記事は一般的な情報提供を目的としています。手続きの詳細・費用・お布施の考え方は、宗派・寺院・自治体・石材店によって異なります。ひとりで抱え込まず、菩提寺・自治体の墓地担当課・行政書士・石材店等の専門家にご相談ください。
生前整理の一環として、墓じまいとあわせてご自身の持ち物や思い出の品を整理しておくと、家族への負担をさらに減らせます。今日が一番若い日です。まずは全体像を把握するところから、ゆっくりと一歩を踏み出してみてください。
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