親・家族の気持ち

家系図の作り方|戸籍5代遡る手順と『親と一緒に家族の物語を残す』時間

家系図の作り方|戸籍5代遡る手順と『親と



「家系図を作りたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」——そう感じている方は多いのではないでしょうか。実は、市区町村の窓口か郵送で戸籍を取り寄せれば、自分で家系図を作ることができます。この記事では、戸籍の取り方・作図の手順・アプリの選び方から、親が元気なうちに一緒に作ることで得られる「家族の物語を残す価値」まで、はじめての方にも分かりやすく解説します。家系図作りは手続きではなく、家族との時間であり、生きてきた証の記録です。

監修:村上充恵(介護離職防止対策アドバイザー/生前整理アドバイザー認定講師。家族の物語を残す対話を専門とし、親子で取り組む家系図作りを支援。)

※この記事は家系図作成の一般的な情報を提供するものです。戸籍取得に関する個別の手続きや、相続手続きの詳細については、市区町村の戸籍窓口・行政書士・司法書士にご相談ください。

家系図とは——家族の物語を残す価値

家系図とは、祖先から現在の家族までの血縁・婚姻関係を図に表したものです。一般的には「遺産相続の手続き」や「名家の歴史調査」のイメージを持たれがちですが、それだけではありません。

家系図を作る本当の価値は、「名前と年月日の記録」の先にあります。祖父がどんな仕事をしていたか、曾祖母がどの土地で育ったか、家業がどのように変わってきたか——そういった「生きた情報」は、公的な戸籍には一切載っていません。それらを知っているのは、今生きている家族だけです。

生前整理の現場で感じるのは、「親が元気なうちにしか聞けなかったことがある」という声の多さです。家系図作りのために一度座って話を聞く機会を持ったことで、「その後の家族の会話ががらりと変わった」という例を、監修の村上充恵もたびたび耳にしています。

家系図は、作り上げることが目的ではありません。作る過程で、家族と過去を振り返り、現在の自分を確かめ、これからの時間をともに考えるきっかけ——それこそが、この作業の最も大切な意味です。

生前整理の観点から見ると、家系図作りは「人生振り返りノート」の実践のひとつです。まず家族の歴史を記録することが、自分自身の人生を整理していく出発点にもなります。生前整理全体のロードマップについては、生前整理のはじめかた・全体ガイドもあわせてご覧ください。

戸籍3種類の違いを知っておこう

家系図作りに欠かせないのが「戸籍」です。一口に戸籍といっても、3種類があります。それぞれの役割を理解しておくと、請求先の判断がスムーズになります。

戸籍謄本(現在の戸籍)

現在生きている戸籍筆頭者と家族の情報が記録されています。手数料は1通450円で、本籍地の市区町村窓口に申請します。自分や親の現在の情報を確認するための「出発点」となる書類です。

除籍謄本(全員が除籍になった戸籍)

その戸籍に記載されていた全員が死亡・転籍・婚姻などで除籍になった後に保管されるものです。亡くなった祖父母の情報や、分家する前の家族構成が分かります。手数料は1通750円です。

改製原戸籍謄本(法改正前の旧様式の戸籍)

戸籍の法改正(昭和23年・昭和32年など)の際に、新しい様式に書き直される前の旧様式の戸籍です。「はらこ」とも呼ばれます。明治・大正・昭和の古い記録が残っており、遡って家系を調べるときに中心的な役割を果たします。手数料は1通750円です。

これら3種類の戸籍の手数料・請求方法については、法務省「戸籍に関する証明書」(www.moj.go.jp)に詳しく掲載されています。市区町村の戸籍窓口か郵送で申請することができ、「家系図作成のため」と記載するだけで申請が可能です。

何代まで遡れるか

現存する最も古い戸籍は「明治19(1886)年式戸籍」とされており、これをさかのぼると最大で5〜7代、150〜200年前(江戸末期)の先祖まで調べられる場合があります。除籍謄本の保管期間は、戸籍法の規定により「除籍から150年」とされています(e-Gov 戸籍法:laws.e-gov.go.jp)。ただし保管期限を過ぎたものは廃棄される場合があるため、なるべく早い時期に取り寄せておくほうが安心です。

明治時代以前を調べたい場合は、戸籍では対応できません。その場合は寺院の過去帳や宗門人別帳が手がかりになります。お盆のときに菩提寺の住職にたずねると、教えていただけることがあります。

遡れる世代に限りがある事実は、「だからこそ今から記録を残すことに意味がある」と感じさせてくれます。先祖を知る旅は、今この瞬間から始めることができます。

戸籍から家系図を作る5つのステップ

戸籍を使って家系図を作るには、「新しい戸籍から古い戸籍へと一つずつ遡る」のが基本的な流れです。以下の5ステップを順番に進めてみてください。

  1. ステップ1:自分の現在の戸籍を取り寄せる

    本籍地の市区町村窓口または郵送で、戸籍謄本の交付申請書を提出します。郵送請求の場合は、申請書・返信用封筒(切手貼付)・本人確認書類のコピー・定額小為替(手数料分)の4点が必要です。本籍地が遠方の場合でも、郵送で取り寄せることができます。市区町村の戸籍窓口に手順を確認するとスムーズです。
    今日できること:自分の「本籍地」の自治体名を住民票で確認しておく。

  2. ステップ2:古い戸籍を遡って取り寄せる

    現在の戸籍謄本には、「改製原戸籍」や「転籍前の除籍謄本」への記載が含まれています。そこに書かれた自治体名・記録番号を手がかりに、次の請求先を特定して申請します。これを繰り返すことで、世代をさかのぼっていきます。なお、請求できるのは直系先祖(自分・父母・祖父母・曾祖父母など)のみです。傍系(いとこ・叔父叔母など)の戸籍は原則として取り寄せることができません。詳しくは市区町村の戸籍窓口か行政書士にご相談ください。
    今日できること:親または祖父母の本籍地を家族に確認しておく。

  3. ステップ3:収集した情報を整理する

    取り寄せた戸籍を読んで分かった「名前・生年月日(または生没年)・続柄」を一覧表にまとめます。読みにくい旧字体や省略表記が出てくることがありますが、焦らずひとつずつ確認していきましょう。不明な部分はいったん空欄にして、後の親族への聞き取りで補完していきます。
    今日できること:ノートに3世代(自分・親・祖父母)の名前と生年を書き出してみる。

  4. ステップ4:作図する(手書き・Excel・アプリ)

    情報が揃ったら、いよいよ家系図を描きます。基本ルールは「横線=婚姻関係、縦線=親子関係、兄弟姉妹は横に並べる」の3点です。男性を四角(□)、女性を丸(○)で表すのが一般的ですが、シンプルに線だけで作っても十分です。手書きの場合は鉛筆で下書きして付箋を使いながら配置を調整し、落ち着いてから清書するとうまくいきます。ExcelやWordでは無料テンプレートを活用すると整然と仕上がります。アプリの選び方については次のセクションで詳しく解説します。
    今日できること:A4の白紙に自分・親・祖父母の3世代を鉛筆で書いてみる。

  5. ステップ5:完成後の保管と家族への共有

    完成した家系図は、デジタル(スキャンまたはアプリ保存)と紙(ラミネート加工・製本)の両方で保管しておくことが望ましいです。お盆・法事・年末年始など家族が集まるタイミングで一緒に見直す機会を設けると、新たな情報が加わり、家族間の会話も生まれます。
    今日できること:完成したらどう保管・共有するかを想像しながら作り始める。

家系図作成に使えるアプリ・無料ツール

デジタルツールを使うと、配置変更や追記が手軽にできて便利です。アプリ選びの際は次の3つの軸を参考にしてみてください。

  • シンプルな入力操作で、パソコン・スマホが得意でない方でも使えるか
  • 家族と共有・共同編集ができるか
  • 写真やエピソードを添付できるか(名前の記録だけでなく、顔と物語を残せるか)

上記の軸をもとに、代表的な3つのツールを紹介します。

すいすい家系図

登録不要でスマホだけで完結できる、最もシンプルな選択肢です。親・子・配偶者をタップで追加でき、「とにかく手軽に始めたい」という方に向いています(すいすい家系図)。

みんなの家系図 by 名字由来net

日本最大級の家系図作成サービスです。誕生日・旧姓・家紋まで登録でき、名字の由来も調べられます。家族のルーツをより深く知りたい方や、情報量を充実させたい方に向いています(みんなの家系図)。

FamilySearch ツリー

国際非営利団体が運営する全機能無料のサービスです。写真・音声の保存も可能で、多言語に対応しています。世界中の家系データと照合できるため、海外ルーツのある方にも使いやすい選択肢です(FamilySearch ツリー)。

どのツールを選ぶにしても、忘れてはならないのは「アプリはあくまで器である」ということです。写真・エピソード・親の声——戸籍には載らない情報を埋めてこそ、家族の物語が完成します。「アプリで作成して印刷し、施設入居中の親や遠方の祖父母に渡す」という使い方も、温かみのある贈りものになります。

親と一緒に作る家系図——最高の人生振り返りの時間

この章が、他のどの記事にも書かれていない、本記事の中心です。

戸籍に書かれているのは「名前と年月日」だけです。祖父がどんな人柄だったか、曾祖母が育った土地の風景、家業が代々どう変わってきたか——そういった「生きた記憶」は、戸籍には一字も残りません。それらを知っているのは、今生きている親や親族だけです。

だからこそ、家系図は親が元気なうちに「一緒に作る」ことに大きな意味があります。戸籍を取り寄せながら親に話を聞く作業は、生前整理の5つの実践メソッドのひとつ「人生振り返りノート」の実践そのものです。過去帳・位牌・古い写真を一緒に見ながら聞き取る時間は、親にとっても「自分の人生を振り返り、その価値を再認識する」豊かな時間になります。

聞いておきたい質問の例

  • 祖父母・曾祖父母の名前と、どんな人だったか
  • 出身地と、そこで暮らしていた頃の話
  • 家業や職業がどのように変わってきたか
  • 兄弟姉妹の名前と、それぞれとの思い出
  • 結婚の馴れ初めや、子育てで印象に残っていること
  • 若い頃に苦労したことと、それをどう乗り越えたか
  • 子どもや孫に伝えておきたい家族の話

こうした質問を家系図の作業と組み合わせることで、会話のハードルがぐっと下がります。「家系図を作りたいから教えて」という切り出し方は、「老後の話」や「終活」とは全く異なるフレームです。過去のことを聞くのは、親にとっても自然に語れるテーマです。

お盆・お正月・法事など、親族が集まるタイミングは最高の機会です。位牌を囲みながら「この人はどんな人だったの?」と聞くだけで、思いがけない家族の歴史が語られることがあります。聞いた内容を家系図の余白に書き添えたり、付箋で添付したりするだけで、名前と年月日だけの家系図が「家族の物語集」へと変わります。

家系図作りが親子の関係を変えるとき

監修の村上充恵は、親子で家系図作りに取り組んだ家族の声をこう語ります。「家系図を一緒に作ったことがきっかけで、親がこれまで話してくれなかった戦争中の苦労や、祖父の仕事への誇りを初めて聞けた——そういったご報告をたびたびいただきます。その体験が、その後の生前整理の話し合いをずっとスムーズにしていきます。親の人生への敬意が芽生えると、『いつか整理しなければ』という義務感が、『一緒に残したい』という気持ちへと自然に変わっていくんですね」。

親孝行の形はさまざまですが、「親の話に耳を傾け、その人生を記録に残す」ことほど、今しかできない親孝行はないかもしれません。親子で取り組む方法については、親を生前整理に誘う方法・実践ガイドもあわせてご覧ください。

ベストショットアルバムと連動させる——顔と名前の歴史アルバム

家系図が完成したら、次のステップとして「ベストショットアルバム」との連動をぜひ検討してみてください。これは、生前整理アドバイザー2級(当センター代表・大久保亮佑取得)が学んだ生前整理普及協会の実践メソッドのひとつです。

ベストショットアルバムとは、手のひらサイズのアルバムに写真30枚以下とコメントを組み合わせたものです。「これだけは手元に置いておきたい」という大切な写真を厳選し、一冊にまとめます。

家系図と写真を組み合わせると、何が生まれるか——「名前だけの家系図」が「顔と名前が一致した家族の歴史アルバム」へと変わります。

顔と名前が一致する家族の歴史アルバムの作り方

家系図の各人物に対応する写真をベストショットアルバムに並べると、「誰がどんな顔をしていたか」が視覚的に伝わります。子どもや孫の世代が手にとったとき、名前だけの家系図よりも格段に親しみやすく、記憶に残りやすくなります。

例えばこのような組み合わせ方があります。

  • 家系図に載っている祖父母・曾祖父母の写真を一枚ずつ選ぶ
  • 写真の裏やアルバムの余白に、名前・生没年・一言エピソードを書き添える
  • 「この人は戦時中に〇〇をした人」「この人から現在の家業が始まった」という短いコメントを添える
  • 家系図と写真アルバムをセットにして、大切な場所に一緒に保管する

古い写真の整理方法や、ベストショットアルバムの具体的な作り方については、写真整理とベストショットアルバムの作り方で詳しく解説しています。

名前・顔・エピソードが揃った家族の記録は、孫世代へ受け継がれる「かけがえのない家族資産」になります。家系図を作ることは、この資産作りの最初の一歩でもあります。

相続発生時にも役立つ家系図——生前準備の副次効果

家系図を生前に作っておくことには、感情的・家族的な価値だけでなく、現実的な副次効果もあります。

相続手続きが発生した際には、「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」の収集が必要になることが一般的です。これは相続人を特定するための手続きであり、複数の市区町村にまたがることも多く、遺族にとって大きな手間になります。

家系図作りのために戸籍を事前に収集・整理しておくと、この作業の下準備が整っている状態になります。どの市区町村にどの戸籍があるかを把握しておくだけでも、万一のときの家族の負担を大きく減らすことができます。

ただし、相続手続き自体は複雑な法的手続きを伴います。個別の相続内容・相続税・遺産分割に関しては、司法書士・行政書士・税理士へのご相談をおすすめします。家系図で整理した情報を持参すると、専門家との相談もスムーズになります。

「家系図を作っておいてよかった」という声が出るのは、こういった万一の場面でもあります。今元気なうちに少しずつ整理しておくことが、残された家族の安心につながります。チェックリストを活用した生前整理の全体的な進め方は、生前整理チェックリスト(無料)からご確認いただけます。

家系図作りのよくある疑問と注意点

Q:自分以外の人の戸籍は取れますか?

戸籍を取得できるのは、直系先祖(自分・父母・祖父母・曾祖父母など)が基本です。横のつながり(いとこ・叔父叔母など、傍系)の戸籍は原則として取り寄せることができません。傍系の戸籍が必要な場合は、弁護士・行政書士への委任手続きが必要です。詳しくは市区町村の戸籍窓口にお問い合わせください。

Q:取得した戸籍謄本のプライバシーはどう守りますか?

戸籍謄本には個人情報が多く含まれています。取得した書類は家族以外への安易な開示を避け、保管場所を明確にしておきましょう。デジタル化する場合はパスワード付きのフォルダやクラウドサービスで管理することが望ましいです。口座番号・暗証番号などの金融情報を同じ場所に記録しないよう注意してください。

Q:業者に依頼するといくらかかりますか?

戸籍調査・作図・表装まで一括依頼した場合の費用は、仕上がり品質や調査範囲によって数万〜数十万円と幅があります。自分で戸籍を集める場合は、1通450〜750円の手数料のみで済みます。「自分で戸籍を集めて、作図だけ業者に依頼する」というハイブリッドの方法も選択肢のひとつです。

Q:マイナンバーカードで戸籍が取得できますか?

2024年以降、マイナンバーカードを活用した戸籍証明書のコンビニ交付が一部市区町村で拡大しています。利用できる自治体・書類の種類は市区町村によって異なりますので、お住まいの自治体の窓口またはWebサイトでご確認ください。

Q:戸籍で分からない場合はどうしますか?

明治時代以前の先祖を調べたい場合や、戸籍が廃棄されていた場合は、菩提寺の過去帳・宗門人別帳・藩の記録などが手がかりになることがあります。お盆の時期に菩提寺に相談すると教えていただける場合があります。また、地域の図書館・文書館に郷土資料が残っていることもあります。

まとめ——家系図は「家族への贈りもの」として

家系図は、戸籍という公的記録と、家族から聞いた物語の両方で完成します。戸籍で分かるのは名前と年月日だけ。そこに親の声・思い出・エピソードを加えることで、子や孫の代に語り継げる「家族の物語」が生まれます。

「親が元気なうち、記憶が確かなうちにしか聞けないことがある」——これは、家系図作りの現場で何度でも実感することです。まず戸籍を1通取り寄せることが、その旅の最初の一歩になります。焦らず、ご自身のペースで進めていただいて大丈夫です。今日が一番若い日です。

生前整理の文脈でいえば、家系図作りは「家族の記録を残す」という生きることへの前向きな投資です。親との会話が生まれ、家族の歴史が形になり、万一のときの準備にもなる——一つの取り組みがこれほど多くの意味を持つことは、なかなかありません。

家系図の取り組みを生前整理全体の中で進めたい方は、生前整理のはじめかた・全体ガイドから全体像を確認してみてください。エンディングノートや財産の記録とあわせて整理することで、家族への記録がより充実したものになります。

監修:村上充恵(介護離職防止対策アドバイザー/生前整理アドバイザー認定講師。家族の物語を残す対話を専門とし、親子で取り組む家系図作りを支援。)

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この記事の監修者

村上 充恵

生前整理普及協会 認定指導員/AFP/介護離職防止対策アドバイザー/神奈川大学エクステンション講座 講師

株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」運営。実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。監修者プロフィール →

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