親・家族の気持ち

エンディングノートとは?遺言書との違い

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エンディングノートとは?遺言書との違い

エンディングノートとは何か、遺言書とどう違うのか、書いたら法的な効力はあるのか——そんな疑問を持つ方へ。エンディングノートは、家族が困らないように医療・介護の希望や財産の在りか、葬儀の希望を書き残すノートで、法的効力はありません。民法の条文と法務省の制度をもとに、遺言書との違い、書く項目、入手先までを整理しました。

エンディングノートとは——家族が判断や手続きに必要な情報を残すノート

エンディングノートとは、自分に何かあったときに備えて、医療・介護の希望、財産や書類の在りか、葬儀の希望、家族へのメッセージを書き残しておくノートです。大阪法務局は、配布しているエンディングノートを「ご家族が様々な判断や手続を進める際に必要な情報を残すためのノート」であり、これまでの人生を振り返り、これからの人生を考えるきっかけにもなるものと説明しています(大阪法務局「エンディングノート」)。

エンディングノートの書き方に法律上の決まりはなく、紙のノートでもパソコンやスマホでも、自由に何度でも書き直せます。形式の決まりがないからこそ気軽に始めて、少しずつ育てていけます。完璧に仕上げる必要はありません。

一言で本質を表すなら、エンディングノートは「自分に何かあったとき、家族が困らないための情報の引継ぎ書」です。遺族が悲しみの中で一から調べなければならない状況を、あらかじめ減らしておく——そのために書くものと理解すると、「何から書けばいいか」が見えてきます。

終活の中でのエンディングノートの位置づけ

終活は人生全体を整理する営みの総称(モノ・財産・医療・人間関係・気持ち)で、エンディングノートはその中の「情報と希望の記録ツール」にあたります。

生前整理の観点では、整理するものを「モノ・心・情報」の3つの柱に分けて考えます。モノの整理は不用品の処分、心の整理は人生の振り返りや感謝の言語化、そして情報の整理がエンディングノートの中心領域です。財産の在りか・医療の希望・葬儀の希望・デジタル資産など、家族が動くために必要な「情報」を一冊に集めておくことが、エンディングノートの本質的な役割です。

終活の全体像は終活とは何か・何をすればよいか、生前整理との関係は生前整理とは何かで詳しく解説しています。

エンディングノートに法的効力はない——遺言は民法の方式に従う必要がある

エンディングノートに法的効力はなく、財産を誰にどれだけ渡すかをノートに書いても、その内容どおりに分けることを家族に義務づけるものにはなりません。

根拠は民法の遺言の規定です。民法960条は「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定め、民法967条は普通の方式の遺言を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つに限っています(e-Gov法令検索「民法」)。市販や自治体配布のエンディングノートは民法の遺言の方式を前提に作られたものではないため、書き込んだ財産の分け方は、原則として遺言の効力を持ちません。ノートの記載が遺言にあたるかどうかが争いになる場面は個別の判断になるため、弁護士・司法書士にご相談ください。

遺言がないまま相続が始まった場合、民法907条により、遺産の分け方は相続人全員の協議で決め、協議が調わないときは家庭裁判所に分割を請求できる仕組みになっています。エンディングノートに書いた希望は、相続人の話し合いで本人の思いを知る手がかりにはなりますが、協議の結果を縛るものではありません。

一方で、医療・介護の希望や葬儀の希望、連絡してほしい人の一覧は、もともと遺言で決める事柄ではありません。法的効力がなくても、家族が迷ったときに「本人はこう望んでいた」と確かめられる拠り所になります。エンディングノートの価値は、法的な取り決めの外にある情報と気持ちを残せる点にあります。

法的効力がないことはエンディングノートのメリットでもある

法的効力がないことは、エンディングノートの弱点のように聞こえますが、書く側にとってはメリットでもあります。形式の不備で無効になる心配がなく、何度でも書き直せて、紙でもデジタルでも自由に選べます。書くために専門家の手続きを通す必要もありません。

「今日書いた内容が5年後には変わっていた」ということは、人生においてよくあります。エンディングノートは、気持ちが変わったら線を引いて書き直せばよく、そのシンプルな自由さが遺言書にはない特徴です。「遺言書を書くほどの財産はない」という方にとっても、エンディングノートは家族への実用的な引継ぎ書として十分な意味を持ちます。

エンディングノートと遺言書の違い——形式・書ける内容・開封の手続きで比べる

エンディングノートと遺言書のいちばん大きな違いは、遺言書は民法の方式を満たせば財産の分け方などに法的効力が生じるのに対し、エンディングノートには法的効力がない点です。形式・書き直し・家族が開くときの手続き・費用も、次の表のとおり異なります。

エンディングノートと遺言書の比較表

比較項目

エンディングノート

遺言書

法的効力

なし(財産の分け方を書いても家族を拘束しない)

あり(民法の方式を満たした場合)

形式

決まりなし(紙・パソコン・スマホ)

自筆証書・公正証書・秘密証書のいずれか(民法967条)。自筆証書は全文・日付・氏名を自書して押印(民法968条。財産目録は自書不要で、各ページに署名・押印)

書き直し

いつでも自由に書き直せる

遺言の方式に従って、いつでも全部または一部を撤回できる(民法1022条)

書ける内容

医療・介護・葬儀の希望、連絡先、財産の在りか、メッセージなど幅広く

財産の分け方など、法律で効力が認められる事項が中心

家族が開くとき

手続きは不要

自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要(民法1004条)。公正証書遺言と、法務局に保管した自筆証書遺言は検認が不要

費用

自治体の無料配布・無料ダウンロードがあり、市販品もある

自筆証書は用紙代程度。法務局の保管制度を使う場合は申請1件3,900円。公正証書遺言は公証人の手数料がかかる

出典:民法(e-Gov法令検索)第960条・第967条・第968条・第1004条・第1022条、法務局における遺言書の保管等に関する法律(e-Gov法令検索)第11条、法務省「手数料」(自筆証書遺言書保管制度)。2026年9月確認。

財産の分け方は遺言書で、気持ちと希望はエンディングノートで

財産を「誰に何を渡したいか」を法的に有効な形で残したい場合は、エンディングノートではなく遺言書が必要です。自筆証書遺言を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」は、費用を抑えながら遺言書を安全に保管する選択肢の一つです(法務省「自筆証書遺言書保管制度」)。

  • 法務局が保管する対象は、民法968条の自筆証書遺言の遺言書に限られます(遺言書保管法1条)。
  • 遺言書は法務省令で定める様式に従い、封をしない状態で持参し、遺言者本人が法務局に出向いて申請します(遺言書保管法4条)。
  • 保管の申請の手数料は1件3,900円です(法務省「手数料」)。
  • 法務局に保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です(遺言書保管法11条)。
  • 遺言者が亡くなったときに遺言書が保管されていることを知らせる相手は、令和5年10月2日から3名まで指定できるようになりました(法務省「自筆証書遺言書保管制度」)。

自筆証書遺言は全文・日付・氏名の自書と押印が必要で、形式を誤ると無効になるおそれがあります。遺言書の内容や書き方は、弁護士・司法書士にご相談ください。遺言書とエンディングノートの両方を用意しておくと、家族は法的な手続きと本人の希望の確認を並行して進めやすくなります。

終活ノートとエンディングノートの違い——目的の重心が自分か家族か

終活ノートとエンディングノートは、実用上ほぼ同じものとして扱われますが、言葉の重心は「自分のため」か「家族のため」かで異なります。終活ノートは、老後にやりたいこと・人生の振り返り・大切にしたい価値観を書き出す、自分と向き合うためのノートです。エンディングノートは、財産の在りか・医療の希望・葬儀の希望を書き残して、遺族が困らないようにするための引継ぎのノートです。

市販品や自治体の配布物では「エンディングノート」「終活ノート」「もしもノート」などの名称が混在しており、両方の要素をあわせ持つノートを1冊使うのが最もシンプルです。2冊に分けるなら、先に終活ノートで気持ちを整理し、そのあとでエンディングノートに情報を書くという順番にすると、どちらも書きやすくなります。

エンディングノートに書く項目——最低限は本人情報・連絡先・医療・財産の在りか・葬儀の5つ

エンディングノートに最低限書いておきたい項目は、本人情報、連絡してほしい人、医療・介護の希望、財産や書類の在りか、葬儀の希望の5つです。5つがそろうだけで、いざというときに家族が動ける情報のベースができます。

  1. 本人情報:氏名・生年月日・本籍、健康保険証や年金手帳の保管場所。
  2. 連絡してほしい人:家族が連絡先を知らない友人・知人、勤務先や所属団体。
  3. 医療・介護の希望:かかりつけ医、延命治療や介護についての意向。厚生労働省は、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い共有する取組を「人生会議」と呼んで普及を進めています(厚生労働省「人生会議してみませんか」)。延命治療の内容や判断は医師にご相談ください。
  4. 財産や書類の在りか:通帳・保険証券・年金書類が「どこにあるか」。「〇〇銀行の通帳は書斎の引き出し上段」という一行で十分です。
  5. 葬儀の希望:葬儀の規模、呼んでほしい人、宗教・宗派、お墓や供養の希望。

口座番号・暗証番号・各種パスワードそのものは、エンディングノートに書かないでください。ノートの紛失や第三者に見られるリスクがあるためです。「どの銀行に口座があるか」「保険証券の保管場所はどこか」までに留め、パスワードはパスワード管理アプリで管理して、アプリ名と保管場所だけをノートに書いておくと安心です。デジタル資産の備えはデジタル遺品の整理と生前対策ガイドで解説しています。

項目ごとの記入例と書き方の手順は、エンディングノートの書き方|項目と記入例で当サイト配布ノートの記入例を使って詳しく解説しています。

書き始められないときは人生の振り返りから入る

エンディングノートを手に入れても書き始められない理由として、「死を認めるようで気が重い」「どこから書けばよいかわからない」「書いたら家族を心配させそう」といった迷いがよく挙げられます。どれも家族のことを考えているからこそ生まれる迷いです。

筆が止まるときは、出生から幼少期、学生時代、仕事、家族、現在の自分へと人生を振り返る「人生振り返りノート」から入る方法があります。写真やエピソードを見ながら心の整理を先に進めると、財産や連絡先といった実用的な情報も書きやすくなります。完成が目的ではなく、「今日は名前だけ」の1行から始めることに意味があります。

エンディングノートの入手先——自治体の無料配布・無料ダウンロード・市販品の3つ

エンディングノートは、自治体の窓口での無料配布、インターネットからの無料ダウンロード、100円ショップや文具メーカーの市販品の3つの方法で手に入ります。

自治体の配布例として、福岡市は「マイエンディングノート」を市役所1階の情報プラザや各区役所の情報コーナーなどで配布し、PDF版もダウンロードできるようにしています(福岡市「マイエンディングノートを配布しています」・2026年9月確認)。お住まいの市区町村のサイトで「エンディングノート」と検索すると、配布の有無を確認できます。

エンディングノートがあると家族が助かるのは手続きの最初の一歩

エンディングノートがあると、家族は「どこに何があるか」を探す手間が減り、葬儀・相続・公的手続きの最初の一歩を迷わず踏み出せます。

親が亡くなった直後、遺族は葬儀・相続・公的手続きをほぼ同時に進めなければなりません。「どの銀行に口座があるか」「保険証券はどこにあるか」「葬儀の希望は何か」がわからないと、悲しみの中で一から調べて判断することになります。どの金融機関に口座があるかわからなければ残高照会の依頼先も決まらず、保険証券の保管場所が不明なら、加入していた保険そのものを見落とすおそれもあります。死後の手続きの全体像は親が亡くなったらやること チェックリストで解説しています。

葬儀の希望が一言書かれているだけでも、家族の意見がまとまらないときに「本人の意思」という共通の判断基準になります。「家族だけで静かに送ってほしい」という一文が、家族の迷いと後悔を減らします。

介護が始まる前こそ書き時——「引継ぎ書」という発想

エンディングノートは死後のためだけのノートではなく、介護が始まったときに家族が代わりに動くための引継ぎ書としても役立ちます。病院・施設・銀行・年金の窓口を家族が代理で回る局面では、本人が細かい説明をできなくなっていることもあります。かかりつけ医・服薬の内容・加入している保険の在りか・年金書類の保管場所が1ページにまとまっていれば、家族は迷わず動けます。

元気なうちに、介護が始まる前に書いておくほど、家族にとっての価値は大きくなります。親に書いてもらいたい方は親にエンディングノートを書いてもらうには、介護への備えは親の介護と実家整理を同時に進める方法、始める時期は終活はいつから始めるべきかも参考にしてください。

エンディングノートとは何かに関するよくある質問

エンディングノートに書いた財産の分け方は守られますか

エンディングノートに書いた財産の分け方に法的な拘束力はなく、相続人がその内容どおりに分ける義務はありません。遺言がない場合、遺産の分け方は民法907条により相続人の協議で決めることになります。財産の分け方を法的に有効な形で残したい場合は、民法の方式に従った遺言書を検討し、弁護士・司法書士にご相談ください。

エンディングノートは法務局に預けられますか

法務局の自筆証書遺言書保管制度で預かる対象は、民法968条の自筆証書遺言の遺言書に限られます(遺言書保管法1条)。エンディングノートは自宅などで保管し、保管場所を信頼できる家族1人に伝えておくと、いざというときに見つけてもらえます。

エンディングノートは誰が書くものですか

エンディングノートは本人が自分の情報と希望を書くものですが、書く年齢や書き方に決まりはありません。本人が書くのが難しい場合は、家族が話を聞きながら代わりに書き留める「聞き書き」の方法もあります。親への切り出し方は親にエンディングノートを書いてもらうにはで紹介しています。

遺言書とエンディングノートは両方用意したほうがよいですか

遺言書とエンディングノートは役割が異なるため、財産の分け方を法的に決めておきたい方は遺言書を、医療・介護・葬儀の希望や財産の在りかを伝えたい方はエンディングノートを用意すると、互いに補い合えます。財産の分け方を決める必要がない方は、エンディングノートだけでも家族の手続きの負担を大きく減らせます。

まとめ:エンディングノートは法的効力のない、家族への引継ぎ書

エンディングノートとは、家族が困らないように医療・介護の希望や財産の在りか、葬儀の希望を書き残すノートです。民法960条により遺言は法律の方式に従う必要があるため、エンディングノートに法的効力はなく、財産の分け方を法的に残すには遺言書が必要です。法的効力がないからこそ、形式を気にせず、気持ちが変わったら何度でも書き直せます。

完成させなくてかまいません。まず今日、名前と生年月日の1行から始めてみてください。その小さな一歩が、家族への大きな贈り物になります。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律・税務・医療の判断の代わりとなるものではありません。遺言書の作成や相続の手続きは弁護士・司法書士に、相続税は税理士に、医療の判断は医師にご相談ください。

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この記事について

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編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。