デジタル遺品

海外デジタル遺産サービス7社比較

海外デジタル遺産サービス7社比較

「スマホのパスワードを聞けないまま親が逝き、ネット銀行の残高すら確認できなかった」——そんな声が、生前整理の相談現場では年々増えています。米国では、デジタル遺産サービスが急速に進化し、遺言からパスワード管理、遺族の事務手続きまでをまとめて支えるプラットフォームが登場しています。日本の家庭にとって何が参考になるのか、主要7社を比較しながら整理します。

海外のデジタル遺産サービスとは

海外でいうデジタル遺産サービスは、単にパスワードを保管するツールではありません。遺言や信託の作成、医療上の意思表示、葬儀希望、家族への情報共有、死別後の事務手続きまでを、オンラインでまとめようとするサービス群です。

ただし、日本の読者が注意したいのは、米国サービスの多くが米国法、米国居住者、米国所在資産を前提にしていることです。日本に住む方がそのまま使っても、遺言や信託が日本で法的に有効になるとは限りません。この記事では海外ベンチマークとして紹介し、個別の法律判断は弁護士・司法書士などの専門家へ相談する前提で整理します。

7社比較:Cake、Trust & Will、Everplans、Lantern、GoodTrust、Empathy、Aura

今回比較したのは、米国を中心に話題化した7サービスです。大きく分けると、終活メディア型、オンライン遺言型、デジタル金庫型、遺族支援プラットフォーム型、オンライン安全サービス型に分かれます。

サービス

主領域

直近の状況

日本居住者の実用度

Cake

終活情報、チェックリスト、デジタルレガシー

2024年にFoundation Partners Groupが買収

記事やチェックリストは参考。法務機能は米国向け

Trust & Will

オンライン遺言、信託、医療指示書

2025年にSeries Cで25Mドル超を調達

米国法前提。日本の遺言作成には使わない

Everplans

デジタル金庫、家族への情報共有

2024年にPrecoaが買収

考え方は参考。テンプレートは米国向け

Lantern

死後手続きチェックリスト、遺族支援

2023年にWellthyが買収、2024年に単体サービス停止

現在の直接利用は難しい

GoodTrust

遺言、信託、デジタルボールト

Estate+を149ドルで案内(2025年時点)

デジタル整理の発想は参考。法務は米国向け

Empathy

死別後の事務・グリーフ支援・LifeVault

2025年にSeries Cで72Mドルを調達

B2B2C中心で直接契約は限定的

Aura

ID保護、プライバシー、家族のオンライン安全

2025年に140Mドルを調達し独立会社化

遺産専用ではないが、家族のアカウント保護に近い

構造的な発見:B2C単独より、保険・葬儀・雇用主チャネルが強い

今回の調査で目立ったのは、単独の消費者向けサービスが、保険会社、葬儀会社、福利厚生プラットフォームへ統合されていることです。Cakeは2024年に葬儀サービス大手Foundation Partners Groupへ、Lanternは2023年に介護支援プラットフォームWellthyへ、Everplansは2024年に生前葬儀計画を扱うPrecoaへ移りました。

一方、Trust & WillやEmpathyは、金融機関、保険会社、雇用主を通じて広げるB2B2Cモデルを強めています。特にEmpathyは2025年のSeries C発表で、LifeVaultを含むプロダクト展開と、数千万人規模のカバーを打ち出しています。

この流れは、日本の生前整理メディアにも示唆があります。デジタル遺品対策は、単体アプリとして売るより、保険、介護、葬儀、不動産、実家じまいの文脈に組み込まれたときに利用されやすい可能性があります。

海外と日本の「終活3本柱」の違い

米国のデジタル遺産サービスは、どのプラットフォームも「情報の整理と共有」を中心に設計されています。遺言書、金融口座、医療指示書、デジタルアカウントを一か所にまとめ、指定した人が適切なタイミングでアクセスできる仕組みです。つまり、「モノ」より「データ」、「気持ち」より「手続き」が先に来る設計といえます。

一方、日本の生前整理には「モノの整理」「心の整理」「情報・手続きの整理」という三つの柱があります。生前整理アドバイザーとして相談を受けるなかで感じるのは、デジタル情報だけ先に整えても、家の中に残ったモノや、家族への言葉が後回しになると、遺族が二重に困るケースが多いということです。

海外サービスの発想を参考にしつつ、日本の家庭では「デジタル情報の整理」を三本柱のひとつとして位置づけるのがバランスの取れたアプローチです。スマホのロックや口座情報だけでなく、「なぜこれを残したか」という背景メモを添えると、家族が見つけたときに判断しやすくなります。

海外サービスの「4分類」発想を日本でどう活かすか

Cake、Everplans、GoodTrustなど、海外の主要サービスに共通するのは「情報を4分類して整理する」という設計思想です。具体的には、法律・金融・デジタル・個人(メッセージ・写真)の4つのカテゴリに情報を振り分け、誰が・いつ・どうアクセスするかを決める構造になっています。

日本版「4分類シート」:デジタル情報を仕分ける

この発想を日本の家庭向けに置き換えると、次の4分類が実用的です。

  1. 手続き系:銀行口座、証券、保険、年金、クレジットカード、スマホ契約
  2. サブスク・デジタルサービス系:動画配信、音楽、ゲーム、クラウドストレージ、定期購読
  3. 思い出・記録系:写真、動画、SNS、ブログ、メール
  4. メッセージ・意思系:家族への言葉、葬儀の希望、ペットや家の扱い

この4分類を使うと、「何が残っていて、誰に知らせ、どう処理するか」が家族にとって判断しやすくなります。最初はノートや表計算ソフトで十分です。専用アプリより、家族が実際に見つけられる場所に置くことのほうが重要です。

A3メソッドで進める日本版デジタル整理フロー

海外サービスのベンチマークと日本の現場感覚を組み合わせて、「A3(エースリー)メソッド」という三ステップで整理すると取り組みやすくなります。

  1. Aggregate(集約):まず「自分が使っているデジタルサービス」をすべてリストアップする。記憶だけに頼らず、メールの「サービス登録完了」「請求書」などを検索して洗い出すのが現実的。
  2. Assign(割り当て):リストに「誰に引き継ぐか」「解約でいいか」「そのままでいいか」を書き込む。判断できないものは「要相談」と書くだけでも前進。
  3. Archive(保管):完成したリストを、家族が実際に見つけられる場所(印刷して保険証書と一緒に保管、または共有フォルダ)に置く。保管場所を家族の誰かに口頭で伝えておく。

この三ステップは、完璧なアプリを探すより先にできることです。生前整理の現場でも、「リストを作っておいてくれたおかげで、口座の解約手続きが半分の時間で終わった」という家族の声を聞きます。仕組みより、「家族が困らない情報を日本語で残す」という姿勢が、最初の一歩として有効です。

日本でそのまま使いにくい理由

海外サービスは便利に見えますが、日本居住者がそのまま使うには限界があります。理由は大きく3つです。

1つ目は、法律の違いです。米国のオンライン遺言や信託テンプレートは、州法や米国の資産管理を前提にしています。日本の遺言、相続、登記、税務に関わる判断は、必ず日本の専門家へ確認してください。

2つ目は、本人確認と金融機関連携の違いです。米国向けサービスは、米国の住所、電話番号、ID、金融機関、保険会社との連携を前提にすることがあります。

3つ目は、家族の運用です。英語の画面で本人が情報を残しても、実際に見る家族が理解できなければ、死後の手続きでは使いにくくなります。日本の家庭では、日本語で、家族が見つけやすい形に整えることが大切です。

日本で遺言の保管や効力に関わる準備を考える場合は、法務省が案内する自筆証書遺言書保管制度など、公的制度も確認対象になります。海外サービスの画面で「Will」や「Trust」と表示されていても、日本の制度に置き換えられるわけではありません。遺言や相続に関わる個別の判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。

日本の家庭が取り入れられるポイント

海外サービスをそのまま使うのではなく、考え方だけを取り入れるなら、次の3つが現実的です。

海外サービスの発想

日本での取り入れ方

デジタルボールト

重要書類、保険、銀行、スマホ契約、サブスクを一覧化する

レガシープラン

写真、SNS、クラウド、家族に残したいメッセージを整理する

死後タスクのチェックリスト

誰が何を確認するかを、家族で共有できる形にする

最初から完璧なアプリを探す必要はありません。生前整理アドバイザー2級として相談を受けるなかで実感するのは、日本の家庭で本当に必要なのは「地域包括センターでの相談 + 自筆証書遺言書保管制度(法務省)+ 家族で見られる日本語の一覧」という三つの組み合わせだということです。米国サービスの発想を一つだけ拝借するなら「家族が見つけられる場所に集約する」点に絞るのが現実的です。まずはデジタル遺品リスク診断で見落としやすい項目を確認し、親のスマホやパスワードが心配な方はデジタル遺品の整理と対策ガイドも参考にしてください。全体の進め方は実家じまいの全体ガイドにまとめています。

被リンクされやすい図解案:7社を4分類に分ける

この記事をSNSや外部メディア向けに展開するなら、7社を「終活メディア」「法務ドキュメント」「デジタル金庫」「遺族支援・福利厚生」の4分類に整理した図解が有効です。

生成AIで画像を作る場合のプロンプト例:日本語の情報メディア用インフォグラフィック。タイトルは「海外デジタル遺産サービス7社比較」。4象限マップ、Cake、Trust & Will、Everplans、Lantern、GoodTrust、Empathy、Auraを配置。白背景、淡い緑と紺、読みやすい日本語ラベル。注記として「日本での法的有効性は専門家確認が必要」。人物写真や実在ロゴの模倣は避ける。

まとめ:日本では「家族が見つけられる情報」に落とす

米国のデジタル遺産サービスは、オンライン遺言、デジタル金庫、葬儀準備、遺族支援までを一体化しつつあります。しかし、日本の家庭にとって大切なのは、海外サービスを無理に使うことではありません。

海外サービスが「情報整理」を中心に設計されているのに対し、日本の生前整理は「モノの整理」「心の整理」「情報・手続きの整理」の三本柱です。海外の発想を参考にしながら、A3メソッド(集約→割り当て→保管)と4分類シートを使って、まずデジタル情報だけでも一覧にしてみることが現実的な第一歩です。

スマホのロック、ネット銀行、証券口座、サブスク、写真、SNS、クラウド。家族が困る情報を、日本語で、本人の意思と一緒に残しておくことが出発点です。法律や税務に関わる内容は専門家に相談しながら、まずは家族が見つけられる一覧を作るところから始めてみてください。

参考文献

  • Foundation Partners Group, Foundation Partners Group Acquires Cake, 2024, https://foundationpartners.com/fpgnews/foundation-partners-group-acquires-cake-to-meet-growing-demand-for-end-of-life-planning-tools-and-resources/
  • Trust & Will, Series C Funding, 2025, https://www.prnewswire.com/news-releases/trust--will-secures-over-25m-in-series-c-to-expand-the-nations-leading-estate-planning-platform-302397820.html
  • Everplans, Everplans Has A New Home, 2024, https://www.everplans.com/blog/everplans-has-a-new-home
  • Wellthy, Wellthy Acquires Lantern, 2023, https://wellthy.com/blog/wellthy-acquires-innovative-end-of-life-platform-lantern
  • Wellthy, Retiring Lantern, 2024, https://wellthy.com/lantern
  • GoodTrust, How much does GoodTrust cost?, 2025, https://support.mygoodtrust.com/support/solutions/articles/66000513649-how-much-does-goodtrust-cost-
  • Empathy, Series C and Empathy Alliance, 2025, https://markets.financialcontent.com/prnews/article/bizwire-2025-5-29-empathy-announces-72-million-series-c-and-unveils-empathy-alliance
  • Aura, Series G Funding, 2025, https://www.prnewswire.com/news-releases/aura-completes-series-g-funding-round-raises-140-million-in-equity-and-debt-302408454.html
  • 法務省, 自筆証書遺言書保管制度, 2026年閲覧, https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

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この記事の監修者

大久保 亮佑

生前整理アドバイザー2級/株式会社Kogera 代表取締役社長

株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」運営。実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。監修者プロフィール →

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