空き家・実家の不動産

特定空き家とは|4基準と固定資産税6倍になる条件

特定空き家とは|4基準と固定資産税6倍に

「特定空き家に指定されると固定資産税が6倍になる」と聞き、実家の空き家を抱えて不安を感じている方は少なくありません。この記事では、空き家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)第2条第2項が定める特定空き家の定義と4つの基準、2023年12月の改正で新設された管理不全空き家、勧告で税負担が変わる仕組み、過料と避け方をお伝えします。

特定空き家とは、空き家特措法第2条第2項の4つの状態に当てはまる空き家

特定空き家とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号。通称「空き家特措法」「空家法」)第2条第2項が定める次の4つの状態のいずれかにあると、市区町村が認めた空き家です(出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」/2026年9月18日確認)。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

前提となる「空家等」は、同法第2条第1項で「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」と定義されています。国土交通省と総務省の基本指針は、概ね年間を通して使用実績がないことを判断の1つの基準として示しています(出典:国土交通省・総務省「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」)。「空き家対策特別措置法」「空家特措法」などの呼び方もすべて同じ法律を指します。

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的・税務的判断の根拠となるものではありません。固定資産税の増減は物件の状況・自治体の判断・課税標準額で異なります。制度の詳細と個別判断は、市区町村窓口、宅地建物取引士、税理士等の専門家にご相談ください。

管理不全空き家との違い——2023年改正で「一歩手前」の区分ができた

管理不全空き家とは、2023年12月13日施行の改正空き家特措法(令和5年法律第50号)で新設された、放置すれば特定空き家になるおそれのある空き家の区分です(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」)。根拠条文は第13条で、市区町村長は指導と勧告ができます。2つの区分の違いは次のとおりです。

項目

管理不全空き家

特定空き家

位置づけ

放置すれば特定空き家になるおそれのある「黄信号」の段階

4つの状態のいずれかにあると認められた段階

根拠条文

空き家特措法第13条(2023年12月新設)

定義は第2条第2項、措置は第22条

行政の措置

指導 → 勧告

助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行

固定資産税

勧告を受けると敷地が住宅用地特例の対象外になる

勧告を受けると敷地が住宅用地特例の対象外になる

過料

命令の段階がないため、命令違反の過料はない

命令違反は50万円以下、報告拒否・立入調査の拒否等は20万円以下

住宅用地特例から外れる土地は、地方税法第349条の3の2で「第13条第2項の勧告を受けた管理不全空家等」と「第22条第2項の勧告を受けた特定空家等」の敷地と定められています(出典:e-Gov法令検索「地方税法」)。黄信号の管理不全空き家のうちに対処すれば、特定空き家への移行も税負担の増加も防ぎやすくなります。現在の状況は空き家リスク診断(無料)で確認できます。

2023年12月施行の改正空き家特措法で所有者に関わる5つの変更点

2023年12月13日施行の改正空き家特措法は、特定空き家になる前の段階から市区町村が関与できるようにし、危険な空き家への対応も速くしました。国土交通省の概要資料のうち、所有者や相続人に直接関わる変更点は次の5つです(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 概要」)。

  1. 所有者の責務の強化(第5条):従来の「適切な管理の努力義務」に加え、国や自治体の空き家施策に協力する努力義務が加わりました
  2. 管理不全空き家への指導・勧告(第13条):特定空き家になる前でも指導・勧告ができ、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れます
  3. 報告徴収権(第9条第2項):市区町村長が特定空き家の所有者に報告を求められるようになりました。報告をしない・虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象です(第30条第2項)
  4. 緊急代執行(第22条第11項):災害などで保安上著しく危険な状態にあり、命令の手続きを取るいとまがない場合、命令を経ずに市区町村が除却などを行い、費用を所有者に負担させられるようになりました
  5. 財産管理人の選任請求(第14条):所有者が不在の空き家や相続人がいない空き家などについて、市区町村長が裁判所に財産管理人などの選任を請求できるようになりました

このほか、市区町村が区域を決めて空き家の用途変更や建て替えを後押しする「空家等活用促進区域」や、NPO法人などが所有者の相談に応じる「空家等管理活用支援法人」の制度も設けられました。お住まいの市区町村で支援法人が指定されているかは、空き家担当の窓口で確認できます。

4つの指定基準に当てはまる具体的な状態

特定空き家の指定基準の条文は抽象的ですが、国のガイドラインが判断の参考となる状態を例示しています(出典:国土交通省・総務省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」)。4つの基準ごとの典型的な状態は次のとおりです。

  • ①倒壊等の保安上の危険:屋根や外壁の崩落・剥離、基礎や柱の著しい腐食・傾斜、門塀や擁壁のぐらつき。台風や地震で隣家や通行人に被害が及ぶおそれがあり、自治体が優先的に対応します
  • ②衛生上の有害:排水設備の破損による悪臭、多量の腐敗したごみ、ねずみ・蚊などの害虫の大量発生、動物の糞尿。いわゆる「ごみ屋敷」に近い状態が典型例です
  • ③景観の悪化:外壁塗装の大規模な剥落・変色、著しい落書きや汚損、敷地内の廃棄物の山積み。景観計画などの地域のルールがある場所では、そのルールとの適合も見られます
  • ④生活環境への悪影響:不法侵入の形跡や、誰でも入れるほどの窓・扉の著しい破損、周辺に入り込む動物や鳴き声の大きい動物の棲みつき。①〜③に当てはまらない場合を広く受け止める規定で、「近所迷惑になっているかもしれない」と感じたら早めの対処が安心です

ガイドラインは同じ項目について、特定空き家より軽い「管理不全空き家」の目安も並べて示しています。たとえば衛生面では、清掃がされず常態的な水たまりや多量の腐敗したごみがある状態が管理不全空き家の例です。老朽化は見た目より速く進むため、帰省時に短時間でも蛇口をひねって排水口の封水を保ち、換気扇を回す習慣は衛生上の問題を防ぐうえで役立ちます。

特定空き家に指定されると起きること——行政措置は4段階で進む

市区町村長は特定空き家の所有者に対し、空き家特措法第22条にもとづき、助言・指導から行政代執行まで段階的に措置を取れます(2023年の改正前は第14条に規定。参考:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)。段階ごとの内容と税への影響は次のとおりです。

段階

内容(空き家特措法第22条)

固定資産税

①助言・指導

除却・修繕・立木竹の伐採などの措置を取るよう求める(第1項)

住宅用地特例は維持される

②勧告

指導しても改善されないとき、相当の猶予期限を付けて措置を勧告する(第2項)

敷地が住宅用地特例の対象外になる

③命令

正当な理由なく勧告に従わないとき、猶予期限を付けて命令する(第3項)。命令の前に意見書の提出や公開の意見聴取を求める機会がある(第4〜8項)。命令をすると標識の設置などで公示される(第13項)。命令違反は50万円以下の過料(第30条第1項)

特例の対象外が続く

④行政代執行

命令が履行されないとき、行政代執行法にもとづき市区町村が除却などを行い、費用を所有者から徴収する(第9項)

特例の対象外が続く

段階を踏まない例外もあります。所有者が過失なく確知できない場合は、公告のうえで市区町村が措置を行う「略式代執行」(第10項)ができます。災害などの緊急時には、命令の手続きを経ずに行う「緊急代執行」(第11項)もできます。代執行の費用は所有者の負担となり、多額になることもあります。手続きの進み方や期間は自治体・物件で異なるため、通知を受け取ったら指摘内容を確認し、まず担当窓口(住宅政策課・空き家担当課など)にご相談ください。個別の対応方針は、市区町村窓口・弁護士・宅地建物取引士等の専門家にご相談されることをおすすめします。

空き家特措法の過料は2種類——命令違反50万円以下と報告拒否20万円以下

空き家特措法の過料は第30条に定められた2種類だけで、特定空き家に指定されたこと自体や勧告を受けたこと自体には過料はかかりません(出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第30条)。

対象となる行為

過料

条文

第22条第3項の命令に違反した

50万円以下

第30条第1項

第9条第2項の報告をしない・虚偽の報告をした、立入調査を拒み・妨げ・忌避した

20万円以下

第30条第2項

立入調査の場合、市区町村長は原則として5日前までに所有者へ通知します(第9条第3項)。通知が届いたら日程や立ち会いについて担当窓口に連絡し、調査に協力する姿勢を示すことが、その後の相談を進めやすくします。

固定資産税の住宅用地特例が外れて最大約6倍になる仕組み

住宅が建つ土地は「住宅用地特例」により、固定資産税の課税標準が200㎡以下の部分(小規模住宅用地)で6分の1、200㎡を超える部分で3分の1に軽減されています(出典:総務省「固定資産税の概要」)。

管理不全空き家や特定空き家として「勧告」を受けると、その敷地はこの特例の対象から外れます。課税標準は軽減前の水準に戻るため、固定資産税額が最大で約6倍程度になる場合があります。都市計画税の軽減(小規模住宅用地で3分の1)も同様に外れます。東京都主税局は、賦課期日(1月1日)までに勧告に対する必要な措置が講じられない家屋の敷地が特例の対象外になると案内しています(出典:東京都主税局「『特定空家等』または『管理不全空家等』に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります」)。

「特定空き家=固定資産税6倍」と言われるのは、小規模住宅用地の6分の1の軽減がまるごと外れるためです。ただし実際の税額は、土地の評価額や負担調整措置などで変わり、単純に6倍になるとは限りません。金額は市区町村の税務課または税理士にご確認ください。税額が上がる引き金は「指定」ではなく「勧告」です。国のガイドラインは、所有者が措置を実施すれば勧告を撤回し、特例の要件を満たす敷地は再び特例の対象になるとしています。

特定空き家に指定されないための管理と、通知が届いたときの対処

特定空き家に指定される主な原因は放置であり、定期的に管理していれば指定を防ぎやすくなります。遠方の子世代でも実践できる管理項目は次のとおりです。

  • 換気・通水(腐食・悪臭・害虫の発生を防ぐ。月1回程度が目安)
  • 草刈り・枯れ木の除去(近隣への悪影響・景観悪化を防ぐため春と秋に最低1回)
  • 外壁・屋根・窓の破損確認と早期補修(台風・大雪の後は特に注意)
  • 敷地内への不法投棄の確認と対処(長期間放置すると衛生基準に抵触しやすい)
  • 郵便物の管理(受け取り・転送。自治体の通知を見逃さないため重要)
  • 立木の大枝の剪定・補強(折れた枝の落下や飛散を予防)

遠方で訪問できない場合は、地元の空き家管理サービスや不動産会社への委託も選択肢です。費用は業者と作業内容で異なるため、複数社の見積もりで比べてください。管理の具体策と費用の考え方は空き家の管理方法をご覧ください。すでに通知が届いている場合は、次の順序で対処すると改善の確認につながりやすくなります。

  1. 自治体の担当窓口(空き家担当課・住宅政策課など)に連絡し、指摘内容と求められる改善措置を具体的に確認する
  2. 指摘された問題(雑草の繁茂・外壁破損・屋根の崩落等)を改善する
  3. 改善した事実を示せる写真や業者の作業報告書を保管しておく
  4. 改善後に担当窓口へ連絡し、現地確認や勧告の撤回などの手続きを確認する

特定空き家を避ける4つの選択肢——管理・売却・解体・補助金

特定空き家を避ける方法は「管理を続ける」「売却する」「解体する」「解体補助金を使う」の4つに整理でき、物件の状況・相続関係・ご家族の事情によって適した選択肢が変わります。

  • 管理を続ける・活用する:将来的な活用・売却の可能性を残したい場合の選択肢です。管理委託を含めた維持コストを事前に確認しておくと判断しやすくなります。売る・貸す・解体・管理の比べ方は空き家・実家をどうするかの判断ガイドで確認できます。
  • 売却する:特定空き家の指定や勧告を受けていても、売却の相談はできます。建物の状態は売却価格に影響する場合があります。査定から引き渡しまでの流れは不動産売却の流れをご覧ください。
  • 解体して更地にする:老朽化が深刻な場合の選択肢です。ただし建物を解体すると住宅用地特例の対象外になり、土地の固定資産税は上がります。費用の目安は解体費用の相場(坪単価・坪数別)と空き家の解体費用で確認できます。
  • 解体補助金を使う:多くの市区町村が空き家の除却(解体)補助金を設けています。当サイトが1,726自治体を調べたデータでは、上限額の中央値は50万円でした。要件と申請時期は自治体ごとに異なり、着工後の申請は対象外になるのが一般的です。詳しくは空き家の解体補助金 完全ガイドと都道府県・市区町村別の補助金ページをご覧ください。

相続した実家でどれを選ぶか迷う場合は、実家を相続したときの4つの選択肢で判断の軸を整理できます。個別の判断は、宅地建物取引士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。

特定空き家と空き家特措法のよくある質問

Q. 空き家特措法・空家法・空き家対策特別措置法は同じ法律ですか?

同じ法律です。正式名称は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号)で、e-Gov法令検索では略称を「空家特措法」としています。特定空き家の定義は第2条第2項、管理不全空き家は第13条、特定空き家への措置は第22条、過料は第30条にあります。

Q. 特定空き家に指定されたら、指定を解除してもらえますか?

指摘された措置を実施したことが確認されれば、その建物は特定空き家ではなくなります。国のガイドラインは、勧告や命令をしている場合は撤回することを市区町村に求めています。改善後に担当窓口へ連絡し、現地確認を依頼してください。作業前後の写真や業者の報告書を残すと説明しやすくなります。

Q. 相続してまだ名義変更をしていない空き家も対象になりますか?

登記名義が故人のままでも、相続人は空き家の所有者等として指導や勧告の相手方になり得ます。相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」/2026年9月18日確認)。個別判断は司法書士にご相談ください。

Q. 解体して更地にすれば固定資産税は安くなりますか?

更地にすると住宅用地特例が適用されなくなるため、土地の固定資産税はむしろ上がります。一方で建物の固定資産税はかからなくなるため、差し引きは物件ごとに異なります。解体は売却や土地活用の予定とあわせて判断し、税額は市区町村の税務課でご確認ください。

Q. 解体費用の補助金は使えますか?

多くの市区町村が空き家の除却(解体)補助金を設けており、当サイトが調べた1,726自治体のデータでは上限額の中央値が50万円でした。要件と申請時期は自治体ごとに異なり、着工後の申請は対象外が一般的です。空き家の解体補助金 完全ガイドで確認できます。

Q. 誰も住んでいなければ、すぐ特定空き家になりますか?

空き家であること自体は特定空き家の認定理由になりません。倒壊の危険・衛生上の有害・景観の悪化・生活環境への悪影響の4つの状態のいずれかにあると認められて初めて対象になります。適切に管理された空き家は、長期間無人でも対象になりません。

まとめ

特定空き家とは、空き家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)第2条第2項の「倒壊・衛生・景観・生活環境」の4つの状態のいずれかにあると市区町村が認めた空き家です。2023年12月13日施行の改正で、一歩手前の「管理不全空き家」が新設されました。

  • 特定空き家への措置は第22条にもとづき、助言・指導→勧告→命令→行政代執行の順に進む。緊急時や所有者不明時は命令を経ない代執行もある
  • 税負担が変わる引き金は「指定」ではなく「勧告」。管理不全空き家・特定空き家のどちらも、勧告を受けると敷地が住宅用地特例の対象外になる
  • 過料は命令違反が50万円以下、報告拒否や立入調査の拒否が20万円以下(第30条)
  • 指定を防ぐ最大の手段は定期的な管理。通知が届いたら、助言・指導の段階で窓口に連絡するのが最も傷が浅い
  • 売却・解体を検討する場合は、費用の目安と補助金の有無を先に確認しておくと選択肢を比べやすい

「まだ大丈夫」と思っていた空き家が、実際には管理不全空き家に当てはまる状態だったということもあります。まずは今の状態を把握するところから始めてみてください。空き家リスク診断(無料)で現状を確認し、解体を考える場合はお住まいの自治体の解体補助金も調べておくと安心です。気になることがあれば市区町村の担当窓口や宅地建物取引士・税理士等の専門家にご相談ください。

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