空き家バンクとは|登録デメリット・売れない時の対処
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「実家が空き家になった。自治体の空き家バンクに登録するか、不動産会社の仲介や買取と比べるか迷っている」——そんな所有者の方に向けて、空き家バンクの仕組み、登録の流れと要件、費用、登録のデメリット、そして登録しても売れないときの選択肢を、国土交通省と法務省の公表情報をもとに整理します。手続きの前に家と思い出の整理から始めると、気持ちが落ち着いて判断しやすくなります。
【免責事項】本記事は一般的な制度情報の紹介を目的としており、個別の不動産取引・契約条件・税務上の取り扱いについて断定するものではありません。具体的な手続きは、宅地建物取引士・自治体の空き家担当課・司法書士・税理士にご相談ください。
空き家バンクとは——自治体が所有者と利用希望者をつなぐ公的な仕組み
空き家バンクとは、市区町村などの自治体が、売りたい・貸したい空き家の情報を所有者から登録してもらい、買いたい・借りたい利用希望者に提供する制度です。国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」消費者向けQ&Aによると、空き家バンクは各自治体が空き家対策の施策の一つとして自発的に設けているもので、自治体に開設の義務はなく、物件の登録は自治体を通して行います。国や運営事業者が所有者から物件を直接受け付ける窓口はありません(出典:国土交通省「全国版空き家・空き地バンク Q&A(消費者向け)」)。
令和元年の国土交通省アンケートでは、回答した全国1,261自治体のうち約7割が空き家バンクを設置していました(出典:国土交通省「空き家・空き地バンク導入のポイント集」令和4年6月)。自治体ごとのバンクを横断して検索できるのが「全国版空き家・空き地バンク」で、国の公募で選定された株式会社LIFULLとアットホーム株式会社がそれぞれ独立して運営しています。国土交通省の資料では、令和8年8月末時点で1,151自治体が参加し、744自治体が物件を掲載中、自治体へのアンケート等で約27,000件の物件が成約済みとされています(出典:国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」)。
空き家バンクが広がった背景には、空き家の増加があります。総務省「住宅・土地統計調査」(令和5年)では、全国の空き家は約900万戸、住宅総数に占める空き家率は13.8%で過去最高でした(出典:総務省「住宅・土地統計調査」)。管理されないまま放置された空き家は、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく「特定空き家」や「管理不全空き家」として市区町村から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。特定空き家の基準と固定資産税への影響は特定空き家とは|4基準と固定資産税6倍になる条件で解説しています。
空き家バンクに登録する流れ——窓口は自治体、契約は宅建業者が担う
空き家バンクへの登録は、物件がある市区町村の空き家バンク担当課に所有者が申請することから始まります。全国版空き家・空き地バンクに直接登録を依頼することはできず、自治体の空き家バンクに登録された物件のうち、所有者が全国版への掲載に同意したものが全国版にも載ります(出典:国土交通省 消費者向けQ&A Q2・Q7)。登録から契約までの一般的な流れは次のとおりです。
- 自治体の窓口に登録を申請する——登録申請書と、物件情報を自治体のサイトや全国版に公開すること・宅建業者などと共有することへの同意書を提出します。国土交通省のポイント集が例示する設置要綱では、申請できるのは所有権などの権利にもとづいて売買・賃貸を行える「所有者等」で、すでに他の宅建業者と媒介契約を結んでいる物件は登録できないと定めています。
- 自治体または協力する宅建業者が現地を確認する——設置要綱の例では、自治体が選んだ担当の宅地建物取引業者(宅建業者)が、自治体と所有者の同行のもとで物件を調査し、結果を自治体に報告します。
- 登録の可否が通知され、物件情報が公開される——自治体の空き家バンクのページに掲載され、同意があれば全国版空き家・空き地バンクにも載ります。
- 利用希望者からの問い合わせに対応し、宅建業者と媒介契約を結ぶ——物件の登録にあたって宅建業者との媒介(仲介)契約を必須にしている自治体もあります(消費者向けQ&A Q5)。設置要綱の例では、登録の通知を受けた所有者は速やかに登録事業者(宅建業者)と媒介契約を結ぶとされています。
- 売買契約または賃貸借契約を結ぶ——重要事項説明と契約書の作成は宅建業者が行います。自治体は交渉や媒介契約には関与せず、苦情や紛争も当事者間で処理する定めが一般的です(設置要綱の例・消費者向けQ&A Q6)。
登録できる物件の要件は自治体ごとの設置要綱で決まり、掲載対象とする空き家の定義、利用者の条件、登録手続き、媒介の責任の所在などが定められています(国土交通省 ポイント集)。相続登記が済んでいない物件や、共有名義で相続人の同意が揃っていない物件は、申請の前に権利関係を整理しておく必要があります。権利関係の整理は司法書士に相談すると確実です。
空き家バンクの費用——登録料は自治体次第、仲介手数料は媒介契約で決まる
空き家バンクに登録する費用は、国が全国一律で定めているものではなく、自治体ごとの設置要綱で決まります。自治体が全国版空き家・空き地バンクに参加する際の申込料・利用料は無料で、所有者に全国版の掲載料が別途かかる仕組みではありません(出典:国土交通省 ポイント集)。一方、成約したときに宅建業者へ支払う仲介手数料(媒介報酬)は、宅地建物取引業法第46条にもとづく国土交通省告示の上限の範囲で、媒介契約を結ぶときに決まります。
費目 | 支払先 | 決まり方と上限(出典) |
|---|---|---|
登録・掲載 | 自治体 | 自治体の設置要綱による。全国版への掲載は自治体が無料で参加しているため、所有者に全国版の掲載料はかからない(国土交通省 ポイント集) |
売買の仲介手数料 | 宅建業者 | 告示の上限内で媒介契約時に合意する。物件価格800万円以下の「低廉な空家等」は、依頼者の一方から受け取れる上限が30万円(税込33万円)。媒介契約の前に報酬額の説明と合意が必要(国土交通省、令和6年7月1日施行) |
賃貸の仲介手数料 | 宅建業者 | 1年を超えて居住者がいない戸建てなどの「長期の空家等」は、貸主から受け取れる上限が賃料1か月分の2.2倍(同上) |
登記・税金 | 法務局・税務署など | 所有権移転登記の費用や、売却益にかかる譲渡所得税は取引の内容で異なる。司法書士・税理士に相談 |
低廉な空家等の特例は、空き家の流通に不動産業者が関わりやすくするために設けられた「上限」であって、実際の手数料額は媒介契約で合意した金額です。国土交通省は、契約後のトラブルを防ぐために、媒介契約を結ぶ前に上限の範囲内で報酬額を合意しておくことが重要だと案内しています(出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」)。媒介契約書の報酬欄を確認してから署名してください。
空き家バンクに登録するデメリット——自治体は代わりに売ってくれない
空き家バンクに登録する最大のデメリットは、自治体が売主の代わりに販売活動や価格交渉をしてくれるわけではない点です。国土交通省の消費者向けQ&Aは、空き家物件の取引に関する交渉や各種手続きは当事者間の責任で行い、トラブルが起きても国や運営事業者は一切関与しないと明記しています。登録前に知っておきたい点を整理します。
- 成約までの期間が読めない——LIFULL HOME'S 空き家バンクの所有者向けページでは、空き家になってからの期間が短い物件や状態の良い物件ほど成約しやすく、賃貸物件の人気が高いとされています。長く放置された老朽物件は、登録しても問い合わせが来ないことがあります。
- 買い手の範囲が自治体の条件で狭まる——移住促進を目的に、県外・市町村外からの利用希望者に限っている自治体があり、利用条件は自治体ごとに異なります(消費者向けQ&A Q4)。
- 価格交渉は所有者が引き受ける——地方の古い家では、大幅な値下げや無償譲渡の申し出が来ることがあります。応じるかどうかの判断は所有者に委ねられます。
- 全国版に載らないことがある——全国版への掲載には所有者の同意が必要で、各自治体の個別の判断で掲載されない場合もあります(消費者向けQ&A Q2)。
- 権利関係と家財の整理が前提になる——相続登記が未了の物件や、共有者の同意が揃わない物件は登録できません。現地確認の前に家財の片付けを求められることもあります。
- 不動産会社との併用に制限がある場合がある——設置要綱の例では、すでに他の宅建業者と媒介契約を結んでいる物件は登録の対象外です。
それでも空き家バンクが向いている所有者
空き家バンクは、地方の戸建てを移住希望者に届けたい所有者や、自治体の補助金と組み合わせて手放したい所有者には向いています。国土交通省のポイント集は、空き家の所有者には公的な主体の関与に安心感を持つ人がいるため、自治体と宅建業者が連携して運営することに意味があると説明しています。全国版空き家・空き地バンクに載れば、自治体のサイトだけでは届かない全国の利用希望者に情報を発信できます。改修費や家財整理費の補助を空き家バンクへの登録を条件にしている自治体もあるため、担当課に補助制度も併せて確認してください。
空き家バンクで売れないときの選択肢——仲介・買取・国庫帰属を比較
空き家バンクに登録しても問い合わせが来ないときは、不動産会社の仲介、買取業者への売却、相続した土地であれば相続土地国庫帰属制度の3つと比べ直します。向いている物件、期間と価格の決まり方、所有者の費用の性格がそれぞれ違うため、1つに絞らず並行して検討するのが現実的です。
方法 | 向いている物件 | 期間と価格の決まり方 | 所有者の主な費用 | 窓口 |
|---|---|---|---|---|
空き家バンク | 移住者向けの地方の戸建て。自治体の補助金を使いたい | 問い合わせ待ち。価格は当事者の交渉で決まる | 登録は自治体の要綱次第。仲介手数料は媒介契約による | 自治体の空き家担当課 |
不動産会社の仲介 | 市街地など市場性のある立地 | 媒介契約にもとづき販売活動。価格は市場の相場と交渉で決まる | 仲介手数料(上限は国土交通省告示) | 宅建業者 |
買取業者への売却 | 老朽化・再建築不可など仲介で動きにくい物件。早く手放したい | 業者が直接買うため短期間で確定する。価格は再販を前提に決まり、仲介の成約価格より低くなるのが通常 | 仲介手数料は不要(買主が業者本人のため) | 買取業者(複数社を比較) |
相続土地国庫帰属制度 | 相続・遺贈で取得した土地で、建物を解体済み。売却先が見つからない | 法務局の審査を経て所有権が国に移る。売却代金はない | 審査手数料は土地1筆あたり14,000円。承認後に10年分の管理費相当の負担金(法務省) | 土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局) |
相続土地国庫帰属制度は令和5年4月27日に始まった制度で、建物がある土地は引き取られないため、家を解体して更地にすることが前提です。共有で相続した土地は共有者全員で申請します(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。制度の要件と売却との比較は相続土地国庫帰属制度とは|費用・要件と売却との比較で詳しく解説しています。解体してから売るか古家付きのまま売るかは古家付き土地の売却|解体して売る場合との比較、解体費用の補助は空き家解体補助金の自治体一覧が参考になります。
空き家バンクに限らず、そもそも空き家が売れない原因(立地・再建築不可・権利関係・価格設定)と対処法は空き家が売れない5つの理由と売るための対処法にまとめています。いずれの方法を選ぶにしても、先に不動産会社の査定で相場を把握しておくと、空き家バンクで提示する希望価格や買取価格の妥当性を判断する目安になります。査定の受け方は実家・空き家の不動産査定|机上査定と訪問査定の違いをご覧ください。
登録前に整えておきたいこと——権利関係・家財・建物の状態
空き家バンクの登録申請を出す前に、権利関係、家財、建物の状態の3つを整えておくと、自治体の現地確認や宅建業者との媒介契約がスムーズに進みます。どれも登録後に慌てて対応すると時間がかかるものです。
- 権利関係——相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく3年以内に申請しないと過料の対象になります(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。名義が亡くなった親のままの家は、登記を済ませてから申請します。共有名義の場合は共有者全員の意思を確認しておきます。
- 家財——現地確認や内見の前に、残す物・処分する物を分けておきます。長年の暮らしの記憶が詰まった家の整理は、家族の歴史を振り返る時間でもあります。「人生振り返りノート」にその家のエピソードを書き留めてから片付けると、後悔が残りにくくなります。遠方の実家の管理や家財整理の進め方は空き家の管理方法|放置リスク・管理委託サービス・費用相場にまとめています。
- 建物の状態——雨漏り・シロアリ・給排水設備の状態を把握しておくと、利用希望者への説明や価格の判断に役立ちます。改修費の補助がある自治体では、登録と同時に補助の要件も確認しておきます。
空き家バンクに関するよくある質問
空き家バンクと不動産会社の両方に依頼できますか
空き家バンクと不動産会社の併用ができるかどうかは、自治体の設置要綱で決まります。国土交通省のポイント集が例示する設置要綱では、すでに他の宅建業者と媒介契約を結んでいる物件は空き家バンクに登録できず、登録後に自治体が選んだ登録事業者(宅建業者)と媒介契約を結ぶ仕組みになっています。登録前に担当課へ、併用の可否と媒介契約の相手を確認してください。
物件がある自治体に空き家バンクがない場合はどうすればよいですか
空き家バンクは自治体が自発的に設けている制度で、開設の義務はありません(消費者向けQ&A Q8)。全国版空き家・空き地バンクへの直接登録もできないため、空き家バンクがない自治体の物件は、不動産会社の仲介や買取業者への売却で手放すことになります。自治体には空き家バンク以外の空き家対策の窓口があるため、補助金や相談先について担当課に確認してください。
登録した空き家は全国版空き家・空き地バンクに自動で載りますか
全国版空き家・空き地バンクへの掲載には、登録時に所有者の同意が必要です。同意が得られていない物件は掲載されず、各自治体の個別の判断で掲載されない場合もあります(消費者向けQ&A Q2)。全国の移住希望者に届けたい場合は、登録申請のときに全国版への掲載に同意しておきます。
空き家バンクに登録すると補助金がもらえますか
空き家バンクへの登録そのものに国の補助金はなく、改修費・家財整理費・解体費などの補助を空き家バンクへの登録や移住者への貸し出しを条件として設けている自治体があります。補助の有無、金額、申請の時期は自治体ごとに異なり、予算枠に達すると受付が終わることもあるため、登録前に担当課で確認してください。解体費用の補助は空き家解体補助金の自治体一覧で市区町村別に調べられます。
まとめ——登録するかどうかは「待てる期間」と「希望価格」で決める
空き家バンクは、自治体が所有者と利用希望者をつなぐ公的な仕組みで、登録は物件がある自治体の窓口を通して行い、契約は宅建業者が担います。登録料は自治体の要綱次第で、仲介手数料は媒介契約で決まります。自治体は代わりに売ってくれないため、成約までの期間と価格は所有者が引き受ける前提で判断してください。
問い合わせを待てる期間が長く、移住者に使ってほしい地方の戸建てなら、空き家バンクへの登録は有力な選択肢です。早く手放したい、老朽化が進んでいる、権利関係が複雑といった事情があるなら、不動産会社の仲介、買取業者への売却、解体後の相続土地国庫帰属制度と並べて比べ直します。実家を相続した場合の売却・賃貸・解体・所有の判断軸は実家を相続したら|売却・賃貸・解体・所有の4選択肢で整理しています。
空き家をどのような形で次の方へつなぐかは、物件の状態・立地・家族の意向によって大きく異なります。具体的な手続きや契約条件、登記や税金の扱いについては、宅地建物取引士・自治体の空き家担当課・司法書士・税理士にご相談ください。
「保有する」と「売却する」を、同じ条件で比較する
金額だけでなく、利用予定、家族の意向、管理の手間、契約・税務上の条件を並べて確認します。
保有する場合
- 課税明細の固定資産税・都市計画税
- 保険、換気、草木、修繕、見回り等の実費
- 将来の居住・賃貸・活用予定と、管理を担う人
- 自治体から指導・勧告を受けた場合の対応
売却する場合
- 査定価格ではなく、諸費用・税を差し引いた手取り
- 共有者、相続登記、境界、残置物等の整理状況
- 古家付き・解体後それぞれの条件と売却期間
- 控除の適用要件は税務署または税理士へ確認
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