空き家・実家の不動産

空き家バンクとは|国・自治体の仕組みと登録の流れ・メリット・デメリットを徹底解説

空き家バンクとは|国・自治体の仕組みと登

「実家が空き家になってしまった。でも遠方に住んでいて管理が難しい」「できれば次の人に大切に使ってほしいけれど、どこに相談すればいいかわからない」——そんな悩みを抱える方に向けて、空き家バンクの仕組みと活用の流れを、公的情報をもとに中立的に解説します。手続きを進める前に、家そのものと記憶の整理から始めると、気持ちが落ち着いて判断しやすくなります。

【免責事項】本記事は一般的な制度情報の紹介を目的としており、個別の不動産取引・契約条件・税務上の取り扱いについて断定するものではありません。具体的な手続きは、宅地建物取引士・自治体空き家担当課・税理士にご相談ください。

空き家バンクが生まれた背景——増え続ける空き家問題

総務省「住宅・土地統計調査」(令和5年)によると、全国の空き家数は約900万戸にのぼり、住宅総数に占める空き家率は13.8%と過去最高水準を更新し続けています。とくに地方部では人口減少と高齢化が重なり、親が施設に入居したり亡くなったりしたあとに実家がそのまま放置されるケースが珍しくありません(出典:総務省「住宅・土地統計調査」)。

空き家を放置すると、建物の劣化・不法侵入・害虫・近隣への景観悪化といったリスクが生じます。さらに2015年施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、管理不全の空き家は「特定空家」に指定され、固定資産税の住宅用地特例(6分の1軽減)が解除される場合もあります。つまり、維持費が増えながら建物価値は下がるという二重の問題が生じるのです。

こうした背景から、国と自治体は空き家を「次に使いたい人」へ橋渡しする仕組みとして、空き家バンクを整備してきました。

空き家バンクの仕組みと利用の流れ

空き家バンクとは、空き家の所有者(売り手・貸し手)と利用希望者(買い手・借り手)を自治体が仲介するマッチング制度です。基本的な流れは次のとおりです。

  1. 所有者が自治体に物件を登録申請する——物件の所在地・面積・現状・希望条件などを申告します。
  2. 自治体が物件情報をウェブ上に掲載する——市区町村の空き家バンクサイト、または国の「全国版空き家・空き地バンク」に情報が公開されます。
  3. 利用希望者が問い合わせをする——現地見学や条件交渉が始まります。
  4. 成約へ向けて契約手続きを進める——売買・賃貸いずれの場合も、宅地建物取引業者(宅建業者)が仲介に入るケースが多く、重要事項説明や契約書の作成が行われます。

登録から掲載・マッチングまでの費用は、多くの自治体では無料または低額です。ただし、成約後の仲介手数料は宅建業者に支払う必要があります。また、自治体によって登録条件(築年数・管理状態・権利関係のクリア状況など)が異なります。事前に対象自治体の担当課に確認することが、スムーズな手続きへの近道です。

国の全国版空き家・空き地バンクと自治体バンクの違い

空き家バンクには大きく2つの種類があります。

国土交通省が推進する「全国版空き家・空き地バンク」

国土交通省は、複数の民間企業が運営する全国規模のプラットフォームに自治体の空き家情報を集約する「全国版空き家・空き地バンク」を整備しています(出典:国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」)。現在はアットホーム株式会社・LIFULL株式会社の2社が国の指定を受けてプラットフォームを運営しており、移住・定住希望者は全国の物件を一元的に検索できます。

  • メリット:全国の移住希望者にリーチできる/検索利便性が高い
  • 注意点:掲載に参加していない自治体・物件もある/情報の詳細度は自治体差あり

自治体独自の空き家バンク

全国版に参加せず、市区町村独自のウェブサイトや窓口で運営している空き家バンクも多数あります。地域移住や空き家活用に力を入れている自治体は、補助金制度や移住相談員の設置など、手厚いサポートをセットで提供していることが多いです。

  • メリット:地域特有の情報や補助金との連携が厚い/担当者と直接やりとりしやすい
  • 注意点:掲載情報の更新頻度や検索機能は自治体によりばらつきがある

所有者としては、全国版と自治体バンクの両方に登録できる場合もあるため、対象地域の制度をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

登録のメリット・デメリット

所有者側のメリット

  • 費用負担が少ない——多くの自治体では登録・掲載料は無料または低額。一般の不動産広告と比べて初期費用を抑えられます。
  • 移住希望者とのマッチング機会——都市部からの移住・二拠点生活を検討している方が閲覧するため、地方物件でも関心を持つ利用者に届きやすいです。
  • 地域活性化への貢献——次の居住者が地域コミュニティに参加することで、地元の維持・活性化につながる側面もあります。
  • 補助金の活用——登録を条件に改修費補助や解体補助を受けられる自治体があります(後述)。

所有者側のデメリット・注意点

  • 成約率の課題——登録から成約まで数か月から数年かかるケースがあります。人口減少が著しい地域では問い合わせ自体が少ない場合も。
  • 物件の整理・点検が必要——登録前に現地確認が求められる自治体が多く、家財道具の整理や最低限の清掃が求められることがあります。
  • 権利関係の整理——相続が未完了、共有名義に複数の相続人がいる場合は登録の前提として権利を整理する必要があります。これは司法書士への相談が有効です。
  • 値下げ交渉が発生しやすい——地方の空き家は築年数が古いことも多く、利用希望者から大幅な値下げ交渉や無償譲渡の申し出が来る場合があります。

宅地建物取引士の仲介との併用パターン

空き家バンクは自治体が運営する「マッチング台帳」に近い存在であり、実際の売買・賃貸契約には宅地建物取引業者(不動産会社)が関与するのが一般的です。空き家バンクと宅建仲介の関係は次のように整理できます。

  • 空き家バンクのみのケース——自治体が買い手と売り手をつなぎ、当事者間で交渉するパターン。ただし専門家なしで進めると、重要事項説明が漏れるリスクがあります。
  • 空き家バンク+宅建業者が仲介するケース——自治体が登録・紹介し、成約手続きは地元の不動産会社が担うパターン。最もトラブルが少ないとされています。
  • 空き家バンクと一般の不動産媒介を並行するケース——バンクに登録しながら、並行して仲介会社にも依頼するパターン。より広い購買層にリーチできます。

いずれの場合も、売買金額・修繕負担の範囲・引渡し後の瑕疵(かし)責任などは、契約書に明確に記載する必要があります。「口約束で進めてしまった」というトラブルを防ぐためにも、宅地建物取引士・自治体空き家担当課・税理士にご相談ください

また、実家の不動産価値をあらかじめ把握しておくと、交渉の目安になります。不動産査定の基礎知識と流れも参考にしてください。

売却・登録前に整えておきたい「家の整理」と「思い出の整理」

空き家バンクへの登録や売却を検討する際、多くの方が直面するのが「家の中に残ったものをどうするか」という問題です。家財道具・衣類・書籍・写真・仏壇……長年の暮らしの記憶が詰まった家を整理することは、単なる片付け作業ではなく、家族の歴史を振り返る時間でもあります。

生前整理の考え方では、「物を通じて人生を振り返ること」が心の整理につながるとされています。「人生振り返りノート」を活用して、その家にまつわるエピソード——子どもの頃の思い出、家族で過ごした季節、親が大切にしていたもの——を書き記すことで、整理の前に感謝と区切りの気持ちが生まれます。焦って家財を一気に片付けようとすると後悔が残ることがあるため、まず「残したいもの・次の人に使ってほしいもの」を自分の手で選ぶことから始めると、気持ちが落ち着きやすくなります。

実家の家財整理や空き家管理の方法については、空き家の管理方法と維持費を抑える手順も参考になります。

また、家の整理が一段落したら、建物の現状(雨漏り・シロアリ・設備の状態など)を確認しておくことも大切です。空き家バンク登録の際に現地調査が入る場合も多く、事前に把握しておくと手続きがスムーズに進みます。空き家を次の所有者へ繋ぐための選択肢では、売却・賃貸・寄付などの手放し方を詳しく解説しています。

利活用補助金・移住支援金など関連制度の概観

空き家バンクへの登録と組み合わせて利用できる補助金や支援制度が各地に設けられています。制度の種類と概要を整理します。

改修費補助

自治体が空き家の改修費用の一部を補助する制度です。対象となる工事(断熱・耐震・バリアフリー等)や補助率・上限額は自治体により異なります。空き家バンクへの登録または移住者への貸し出しを条件としていることが多いです。

解体撤去補助

老朽化が進み活用が難しい空き家の解体費用を一部補助する制度です。「危険空き家」「特定空家」に指定された物件を対象とする自治体が多いです。解体後の土地活用(農地転用・公園整備等)の計画も求められる場合があります。

移住支援金・移住奨励金

東京圏から地方へ移住した方に移住支援金(最大100万円など)を交付する制度が国・自治体で実施されています。空き家を購入・賃借して移住するケースが対象要件に含まれることがあります。支給条件(就業要件・申請期限等)は自治体ごとに異なるため、移住先の自治体窓口への確認が必要です。

家財道具整理費補助

空き家登録を促進するため、家財の整理・処分費用を助成する自治体も増えています。金額・対象物品・申請手続きは各自治体のウェブサイトで確認できます。

いずれの補助金も、申請タイミング・対象条件・予算枠が決まっているため、早めに自治体の空き家担当課に相談することをお勧めします。また、補助金を受けた場合の確定申告(雑収入扱いとなる場合など)については、税理士へのご相談が安心です。

空き家バンク以外の活用方法と比較したい場合は、空き家の活用方法と賃貸・民泊の選択肢もあわせてご覧ください。家じまいの全体的な流れや出口の選び方については、家じまいの進め方と出口選択の考え方が参考になります。

まとめ——空き家バンクは「繋ぐ」ための制度

空き家バンクは、長年家族が暮らした家を「次の所有者・利用者へ繋ぐ」ための公的な仕組みです。費用を抑えながら移住希望者とのマッチングを目指せる一方、成約まで時間がかかる場合もあるため、不動産会社との併用や補助金の活用を組み合わせることが現実的な選択肢になります。

手続きを始める前に大切にしたいのは、家そのものと「そこに積み重なった思い出」を丁寧に整理する時間を持つことです。「人生振り返りノート」に家族の記憶を書き留め、残したいものを自分の手で選ぶプロセスを経ることで、次のステップへの気持ちが自然と整ってきます。「今日が一番若い日」という言葉のとおり、今できることから一歩ずつ進めてみましょう。

空き家をどのような形で次の方へ繋ぐかは、物件の状態・立地・家族の意向によって大きく異なります。具体的な手続きや契約条件については、必ず宅地建物取引士・自治体空き家担当課・税理士にご相談ください

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この記事の監修者

大久保 亮佑

生前整理アドバイザー2級/株式会社Kogera 代表取締役社長

株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」運営。実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。監修者プロフィール →

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