GUIDEこの記事は実家じまい完全ガイドフェーズ04家の行き先を決める」の解説記事です

空き家・実家の不動産

家じまいの進め方|5つの出口と判断軸

家じまいの進め方|5つの出口と判断軸

家じまいの進め方は、現状把握・物の整理・出口の比較・専門家相談・手続き・記録の6ステップです。出口には売却・解体・贈与・空き家バンク・賃貸活用の5つがあり、費用の先出しと現金化までの時間が大きく違います。この記事では5つの出口の詳細比較、税金と補助金の要点、相続登記の義務化、家族の合意形成の順序、思い出の整理方法までまとめます。

家じまいとは、住み手のいなくなった家の出口を決めること

家じまいとは、親や自分が長く住んだ家について、売る・壊す・譲る・活用するのいずれかを家族で決めて実行する一連のプロセスを指します。似た言葉の「実家じまい」は、子世代が親の実家を片付ける文脈で使われることが多いのに対し、家じまいは本人・家族が主体となって家の行方そのものを決める場面で使われます。子世代が主役になる進め方は実家じまいで後悔しないための手順で整理しています。

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%に達しています(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計」、結果の概要PDF/2026年9月2日確認)。家じまいを先送りにするほど、建物の傷みと管理の負担は増えていきます。大切なのは、家じまいを「早く片付けなければならない負担」ではなく「家族の歴史を丁寧に次へ繋ぐ機会」として捉え直すことです。この視点の転換が、家族の合意形成にも心の整理にも大きな違いをもたらします。

家じまいの5つの出口を費用・現金化・向くケースで比べる

家じまいの出口は、売却・解体して更地化・贈与・空き家バンク登録・賃貸活用の5つに整理できます。正解は家の状態・立地・家族の事情で変わるため、費用の先出しと現金化までの時間を並べて比べるところから始めてください。

出口

費用の先出し

現金化までの時間

向いているケース

売却(仲介)

ほぼ不要

数か月〜1年程度

市場価格に近い金額を狙いたい

売却(買取)

不要

短い

早く手放したい。価格は仲介より下がる傾向

解体して更地で売る

解体費が先に必要

解体期間+売却期間

建物の傷みが激しい/更地のほうが買主の用途が広い

贈与・生前贈与

登記費用・税負担

現金化しない

引き継ぐ家族が決まっている

空き家バンク登録・賃貸活用

修繕費が必要な場合あり

長期・分割

地域に住み手の需要がある/収益を得たい

売却(仲介・買取)

不動産会社を通じて第三者に売る方法です。仲介は市場価格に近い金額が期待できますが、売れるまでに時間がかかる場合があります。買取は業者が直接購入するため早期に現金化できますが、仲介より価格が低くなる傾向があります。築年数が古く、リフォーム費用が見込まれる家でも、立地次第で買い手がつくケースは少なくありません。売却を検討する際は、査定から成約までの流れを先に把握しておくと交渉がしやすくなります(不動産売却の流れと手続きガイド)。

解体(更地化)

建物を取り壊して更地にする方法です。建物の老朽化が著しい場合や、土地としての活用を想定する場合に選ばれます。解体費用は建物の規模・構造・立地によって異なり、数十万円から数百万円規模になることもあります(詳しい相場は空き家の解体費用の相場)。自治体によっては解体補助金が利用できる場合があります。なお、更地にすると固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が外れ、税負担が増える場合があるため、解体前に税理士や自治体に確認することをおすすめします。

贈与・相続

家を子世代や第三者に無償または低価格で引き渡す方法です。贈与税・相続税の計算は複雑で、適切な時期・方法の選択が重要です。個別の税額や節税手法については税理士にご相談ください。

空き家バンク登録

自治体が運営する空き家バンクに物件を登録し、移住・定住希望者とマッチングする方法です。売却や賃貸の形で活用されます。地方部では活発に利用されており、空き家の地域貢献型の活用策として注目されています(空き家バンクの仕組みと手続き)。

賃貸活用

建物をリフォームして賃貸に出す方法です。継続的な収入が見込める一方、入居者管理・修繕費用・空室リスクが伴います。建物の状態と立地を踏まえた収支シミュレーションが重要で、不動産会社や管理会社への相談から始めるとよいでしょう。

迷いやすいのは売却か解体かの判断です。建物にまだ価値が残っているかどうかが分かれ目になるため、まず古家付きの状態で複数の不動産会社に査定を依頼し、市場の反応を確認してから解体の要否を決めると失敗が減ります。

家じまいは6つのステップに分けて進める

家じまいは一度の決断ではなく、順番のあるプロセスです。次の6ステップに分けると、家族の誰が何をするかを割り振りやすくなります。

  1. 現状把握と情報共有:家の名義・築年数・抵当権の有無・固定資産税額を確認し、相続人全員で共有します
  2. 家の中の整理:残す・思い出として保管する・次の人に渡す・手放すの4軸で仕分けます
  3. 出口の比較:売却・解体・贈与・空き家バンク・賃貸活用を条件と照らして絞り込みます
  4. 専門家への相談:宅地建物取引士・税理士・司法書士・解体業者のうち必要な相手に相談します
  5. 手続きと工事:選んだ出口に応じた契約・申請・工事を進めます
  6. 記録の保存:写真やアルバムを整理し、家族の記憶を形に残します

ステップ2の物の整理は、業者に丸投げせず、できる限り本人や家族が関わることをおすすめします。「これは祖母が使っていたもの」「この写真の人は誰か」という情報は当事者にしか残せません。手放しきれない品はみかん箱ほどの「思い出箱」に収め、写真は30枚前後に絞った小冊子にまとめると、家がなくなっても大切なものが手元に残ります(具体的な作り方は後述します)。

売却・解体にかかわる税金と補助金の要点

家じまいで確認しておきたい制度は、譲渡所得の特別控除・固定資産税・解体補助金の3つです。いずれも要件が細かく、適用の可否は物件と時期で変わるため、早めに税理士や市区町村窓口に確認しておくと判断が固まります。

  • 相続した居住用財産の3,000万円特別控除:相続で引き継いだ家を売却する場合、昭和56年5月31日以前の建築であること・耐震改修または解体の必要があることなどの要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、同庁タックスアンサー/2026年9月2日確認)。適用要件は複雑なため、早めに税理士に確認することをおすすめします
  • 固定資産税:空き家を保有し続ける限り毎年課税されます。管理不全が進んで特定空家等の勧告を受けると住宅用地特例が外れ、負担が増えます(参考:国土交通省「空家等対策の推進」、同省/2026年9月2日確認)
  • 解体補助金:老朽・危険空き家の解体費を補助する制度で、ふれあいの丘の調査では全国1,726市区町村のうち201市区町村(11.6%)が実施していました(2026年8月19日時点・ふれあいの丘調べ)。地域別の補助金情報で自分の市区町村を確認できます

制度は改正が頻繁です。「こういう制度があるらしい」と聞いたら、官公庁のサイトか税理士への相談で必ず裏を取ってください。

相続登記は2024年4月から3年以内の申請が義務になった

相続で不動産を取得した場合、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられています。2024年4月1日に施行された制度で、正当な理由なく申請しないと過料の対象になり得ます(出典:法務省「相続登記の申請義務化」、同省/2026年9月2日確認)。

名義が親のままの家は売却も解体の補助金申請も進めにくく、相続人が増えるほど合意形成の手間も増えます。家じまいの方針が固まっていない段階でも、登記だけは先に司法書士へ相談して片付けておくと、後の選択肢が広がります。

家族の合意形成は「条件」と「希望」を分けて話す

家じまいで最も難しいのは、家族全員の納得を得ることです。「売りたい」「残したい」という意見の食い違いは自然に起きるもので、話がこじれるのは条件と希望を同時に議論してしまうときです。

早めに「話し合いの場」を設ける

相続が発生してから初めて話し合う、というケースが多いですが、これは感情的になりやすく時間もかかります。親が元気なうちに「家の行方について一度話しておきたい」と声をかけ、穏やかな雰囲気の中で話し合う機会を作ることが理想です。

「条件」を先に確認し、「希望」はそのあとで伝え合う

「誰も住む予定がない」「維持費が年間いくらかかる」という条件(事実と数字)を全員で確認し、そのうえで「すぐ売るのは寂しい」といった希望を伝え合う順番にすると、感情論になりにくくなります。「売りたくない」は希望、「維持費がかかる」は条件と分けて考えると、話し合いが整理されます。

一人に負担を集中させない

長男・長女が「全部やらなければ」と思い込み、疲弊してしまうケースは少なくありません。手続きを分担する・費用を折半するなど、役割を意識的に分散することが大切です。

「親の気持ち」を中心に置く

親が「この家には思い出がある、すぐに売るのは嫌だ」と感じているなら、その気持ちを子世代が否定せずに受け止めることが信頼関係の出発点です。「早く決めなきゃ」という焦りが、かえって対立を生むことがあります。兄弟間の具体的なもめ方と防ぎ方は兄弟で実家じまいがもめる原因と予防策で整理しています。

思い出の整理は「思い出箱」と「ベストショットアルバム」が実践しやすい

家じまいで最後まで残るのが心の整理です。長年暮らした家には家族の歴史が詰まっており、建物がなくなってもその記憶は家族の中に生き続けます。生前整理普及協会が提唱する実践メソッドを使うと、物の整理が自然と心の整理につながります。

思い出箱をつくる

家の中に残す必要はないけれど手放しきれない思い出の品を収める場所として「思い出箱」を作ります。みかん箱サイズ(約37×33×24cm)の、抱えて持ち運べる箱を用意し、できれば布や装飾で仕立てて「大切なものを入れる、大切な箱」として整えるのがポイントです。娘がくれた手描きの手紙、父からもらった毛筆の一文のように、端から見ればガラクタでも本人にとってはかけがえのない品を収めることで、「家はなくなっても大切なものは手元にある」という安心感が生まれます。家じまいの場面では、家族それぞれが自分の思い出箱を作るのも一つの方法です。

ベストショットアルバムで家族の歴史を残す

遺品整理の現場では、大量の写真アルバムの扱いに困るケースが後を絶ちません。重くて見返せないまま、やむなく全て手放してしまったという話は珍しくありません。ベストショットアルバムは、手のひらサイズの小冊子に写真を30枚以下に厳選し、一枚一枚にコメントを添えたものです。施設に入居する際も家族や職員と一緒に見られ、アルバムを作るプロセスそのものが自分の人生を振り返り肯定する時間になります。「どれだけ写真を持っているか」ではなく「その写真でどれだけ家族と語り合えるか」が、ベストショットアルバムの核心です。

思い出の整理と家の整理を並行して進めることで、「家を手放す」という決断が喪失ではなく「次の人に家族の歴史を繋ぐ」行為として捉えられるようになります。「今日が一番若い」——元気な今だからこそ、自分の手で丁寧に整理できます。

専門家との連携は局面ごとに相手を変える

家じまいは一人で完結できる作業ではなく、局面ごとに適切な専門家と連携することが後悔のない結果につながります。

  • 宅地建物取引士(不動産会社):売却・賃貸活用・空き家バンク登録など、不動産の活用方針を検討する窓口です。複数社に相談・査定依頼をして、条件や担当者の対応を比較することをおすすめします
  • 税理士:譲渡所得税の計算・各種特別控除の適用要件・贈与税や相続税の概算把握など、税務上の判断が必要な場面で相談します。不動産売却を検討する前に一度相談すると、後から慌てずに済みます
  • 司法書士:名義変更(相続登記)・抵当権抹消など、登記手続きに関わる場面で依頼します
  • 解体業者:複数の業者から見積もりを取ることが基本です。工事費・廃材処理費・仮設費などの内訳を確認し、自治体の補助金申請が必要な場合は申請のタイミングと着工時期の順番も事前に確認してください
  • 自治体の空き家担当窓口:補助金・空き家バンク・特定空き家の認定基準など、地域固有の情報は自治体の窓口が最も正確です

専門家への相談を「費用がかかること」と後回しにしがちですが、相談なしで進めて後からトラブルが発生するケースも少なくありません。宅地建物取引士・税理士・司法書士・解体業者・自治体の空き家担当に、早めにご相談ください。

よくある質問

家じまいはいつから始めればよいですか

親が元気で意思を伝えられるうちが最も選択肢の多い時期です。相続が発生してから初めて話し合うと、判断材料の収集と感情の整理を同時に進めることになり負担が重くなります。

家じまいの費用は総額でどれくらいかかりますか

片付け・処分費、解体する場合の解体費、登記費用、売却時の仲介手数料が主な内訳です。解体を伴うかどうかで総額が大きく変わるため、まず解体の要否を査定で見極めてください。

誰も引き取り手がいない家はどうすればよいですか

空き家バンクへの登録、自治体や隣地所有者への譲渡の打診、相続土地国庫帰属制度の要件確認といった選択肢があります。要件が細かいため、司法書士や市区町村窓口にご相談ください。

まとめ——家じまいは「家族の物語を次へ繋ぐ」行為

  • 家じまいは6ステップのプロセス。現状把握と情報共有から始める
  • 出口は売却・解体・贈与・空き家バンク・賃貸活用の5つ。費用の先出しと現金化の速さで比べる
  • 売却か解体かは、古家付きの状態で査定を取ってから決めると失敗が減る
  • 相続登記は取得を知った日から3年以内が申請義務。方針が固まる前でも先に済ませられる
  • 家族の話し合いは、条件(事実と数字)を先に共有し、希望は後から伝え合う
  • 思い出箱・ベストショットアルバムを使うと、物の整理が自然と心の整理につながる

「今日が一番若い」——今この瞬間が、動き始めるのに最も良いタイミングです。まずは家族で現状を共有する場を設けること、そして専門家に一度相談することから、小さな一歩を踏み出してみてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的判断の根拠となるものではありません。個別の税額・登記・契約については、税理士・司法書士・宅地建物取引士などの専門家にご相談ください。

「保有する」と「売却する」を、同じ条件で比較する

金額だけでなく、利用予定、家族の意向、管理の手間、契約・税務上の条件を並べて確認します。

保有する場合

  • 課税明細の固定資産税・都市計画税
  • 保険、換気、草木、修繕、見回り等の実費
  • 将来の居住・賃貸・活用予定と、管理を担う人
  • 自治体から指導・勧告を受けた場合の対応

売却する場合

  • 査定価格ではなく、諸費用・税を差し引いた手取り
  • 共有者、相続登記、境界、残置物等の整理状況
  • 古家付き・解体後それぞれの条件と売却期間
  • 控除の適用要件は税務署または税理士へ確認

まず課税明細から年間負担を合計し、売却も比較したい場合だけ、下の広告から査定条件を確認できます。

記事を読んだら、お住まいの市区町村の具体的な情報や費用の目安を確かめてみましょう。

MUNICIPAL DATABASE

お住まいの市区町村の補助金情報を確認

全国1,726自治体の収録データから、公式ページと掲載値を編集確認済みの補助制度を確認できます。

※補助金情報は各自治体の公開情報をもとにした独自調査です。制度・金額・募集状況は更新されるため、申請前に自治体の公式情報をご確認ください。

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この記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。相続・年金・税・登記などの手続きは、 個別の状況や法改正によって取り扱いが異なります。具体的な手続きや判断は、各市区町村窓口・ 年金事務所・法務局・税務署、および司法書士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。