相続・死後の手続き

相続税の基礎控除と申告必要か判定|3,000万+600万×法定相続人数の計算と申告不要ケース

相続税の基礎控除と申告必要か判定|3,0

親が亡くなったあと、「相続税の申告が必要なのか、どこから手をつければいいのか」と戸惑う方は少なくありません。この記事では、基礎控除の計算式と法定相続人の数え方、申告が必要なケースと不要なケースの判断手順を、国税庁の公式情報をもとに中立的に整理しています。まず基礎控除額を確認することが最初の一歩です。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の相続税額の算定・節税指導・申告代行には対応していません。実際の申告要否・税額の判定は、お近くの税務署または税理士にご相談ください。国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」でも事前シミュレーションが可能です。

相続税の基礎控除とは(計算式と早見表)

相続税には「基礎控除」という仕組みがあり、遺産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、原則として申告も不要とされています。基礎控除額の計算式は次のとおりです(国税庁 No.4152「相続税の計算」)。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

この計算式は、財務省の公式Q&A(財務省「遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?」)や、政府広報オンライン(「相続税はいくらから?基礎控除とは?」2024年7月)でも同様に示されています。

たとえば、配偶者と子ども2人が相続人であれば、法定相続人は3人となるため、基礎控除額は一般的に「3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円」が目安とされています。この水準を下回る遺産であれば、多くの場合、申告を要しないとされています。

以下に、法定相続人の人数別の基礎控除額の目安をまとめました(国税庁 No.4152 に基づく一般的な目安です)。

法定相続人の数別・基礎控除額の目安

法定相続人の数

基礎控除額(目安)

1人

3,600万円

2人

4,200万円

3人

4,800万円

4人

5,400万円

5人

6,000万円

この早見表は一般的な目安として参照ください。実際の基礎控除額の判定は、法定相続人の確定が前提となります。詳細については後述の「法定相続人の数え方」をご確認ください。

法定相続人の数え方(配偶者・子・代襲相続・養子の扱い)

基礎控除額の計算に必要な「法定相続人の数」は、民法に定める相続順位に従って決まります。基礎控除の計算上の法定相続人には、いくつかの注意点があります(国税庁 No.4152 より一般的な解説として整理しています)。

相続放棄をした人も含める

相続放棄は、実際に財産を受け取らない手続きですが、相続税の基礎控除を計算する際の「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含めてカウントするとされています。これは、民法上の相続人の数と税務上の取り扱いが一部異なる点として覚えておくと役立ちます。

養子縁組がある場合の算入上限

養子縁組で迎えた子も法定相続人に含まれますが、基礎控除の計算上は算入できる養子の人数に上限があるとされています。一般的には、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までが算入可能とされています(国税庁 No.4152)。

代襲相続人について

相続人となるべき子が被相続人より先に亡くなっている場合、その子の子(孫)が代わりに相続人となる「代襲相続」が生じることがあります。代襲相続人は法定相続人の数に含まれます。家族構成によって法定相続人の確定が複雑になるケースもあります。

法定相続人の数え方について不明な点や個別の判断が必要な場合は、税務署または税理士にご相談ください。

申告不要のケース(基礎控除内なら申告も納税も不要)

相続税の申告は、すべての相続で必要なわけではありません。国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」によれば、「遺産の合計額(正味の遺産額)が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告書の提出も原則として不要」とされています。

政府広報オンラインの情報(2024年7月)によれば、国内で相続が発生した件数のうち、相続税の申告対象となったのは全体の約9〜10%程度にとどまるとされています。つまり、相続が発生した家庭の多くは、相続税の申告を必要としないということになります。

典型的な「申告不要」のケースとして多いのは、次のような状況です。

  • 遺産が自宅(自宅1軒)と少額の預貯金のみで、合計が基礎控除額を下回る場合
  • 配偶者と子ども1〜2人が相続人で、遺産総額が4,200万円〜4,800万円(目安)以下の場合
  • 生命保険金・退職手当金が非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)以内に収まる場合

「うちは大きな財産もないし、相続税なんて関係ないと思っていたが、本当に申告しなくてよいのか」とご不安の方も多くいらっしゃいます。まずは遺産の合計額を把握し、基礎控除額と比べることが判断の出発点となります。

ただし、申告不要の判断は「正味の遺産額」の正確な把握が前提です。財産の漏れや見落としがあると、後から申告が必要だったと判明することもあります。不安な場合は、税務署や税理士への確認をおすすめします。

税額0円でも申告が必要なケース(特例適用時の注意)

「計算の結果、相続税の税額がゼロになったから申告しなくてよい」と考える方が一定数いらっしゃいますが、これは誤りとなる場合があります。一部の特例を適用したことで税額がゼロになる場合でも、申告書の提出が必要とされているケースがあります。

小規模宅地等の特例(適用後0円でも申告必須)

被相続人が住んでいた宅地などを相続する場合、「小規模宅地等の特例」を適用することで、土地の評価額を最大80%減額できる仕組みがあるとされています(国税庁 No.4124「小規模宅地等の特例」)。この特例を適用した結果、相続税の税額が0円になる場合であっても、申告書の提出は必要とされています。「特例を申告書に申告したから0円になった」という事実を公式に記録・確定させる意味があるためです。

配偶者の税額軽減(適用後0円でも申告必須)

配偶者が相続する場合は、「配偶者の税額軽減」により、法定相続分もしくは1億6,000万円のいずれか大きい額まで相続税がかからないとする仕組みがあるとされています(国税庁 No.4205)。こちらも特例の適用を受けた結果として税額がゼロになる場合でも、申告書の提出が必要です。

特例を適用するかどうか、またどのように申告書へ記載するかは、税務上の専門的な判断を要するケースが多くあります。特例の活用を検討される場合は、早めに税理士または税務署へご相談されることをおすすめします。

国税庁「申告要否判定コーナー」の使い方

「自分の場合、申告が必要かどうか」を事前に確認したい方には、国税庁が無料で提供している「相続税の申告要否判定コーナー」を活用する方法があります。

このサービスは国税庁の公式ウェブサービスであり、個人情報の登録や費用は不要で、匿名で利用できます。中立的な情報確認のツールとして活用できます。

主な入力項目と手順の目安

  • 被相続人(亡くなった方)の氏名・死亡年月日
  • 法定相続人の数(配偶者・子の人数など)
  • 相続財産の概算(預貯金・不動産・有価証券・生命保険金など)
  • 債務・葬儀費用の概算

入力自体はおおむね10〜20分程度でできることが多いとされています(財産の状況によって異なります)。入力が完了すると、申告が必要か否かの判定結果の目安が表示されます。

結果の見方と注意点

判定コーナーの結果はあくまでも「目安」です。財産の種類や特例の有無によっては、実際の申告要否が結果と異なる場合もあります。特に小規模宅地等の特例や生命保険の非課税枠が絡む場合は、最終的な確認を税務署または税理士へ依頼されることをおすすめします。

申告期限は10ヶ月以内・遅延ペナルティにも注意

相続税の申告が必要な場合、申告書の提出期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」とされています(国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」)。一般的には、被相続人が亡くなった日を基準として10ヶ月後が期限となります。

申告書の提出先は、被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する税務署とされています。申告書の書式は国税庁ウェブサイト(国税庁「相続税の申告手続(B1-2)」)から入手可能です。

期限を過ぎた場合のリスク

申告期限を過ぎると、「無申告加算税」や「延滞税」が加算される場合があるとされています。申告が必要なケースでは、期限内の対応が重要です。10ヶ月という期間は、財産の調査・遺産分割協議・申告書の作成などをすべて含めた期間です。早めに動き始めることで、余裕を持った対応ができます。

自分で申告できるケースと、専門家に依頼するケースの目安

申告書の作成は複雑に感じられますが、財産の種類や相続人の構成によっては、ご自身で対応できる場合もあります。以下はあくまでも一般的な目安です。

  • 財産が預貯金のみで相続人が1〜2名・不動産評価が不要なシンプルなケース → ご自身での申告も選択肢のひとつ
  • 不動産の評価・海外資産・小規模宅地等の特例・複数の相続人が絡むケース → 税理士への依頼を検討するとよいとされています

申告書の作成・提出については、国税庁「相続税の申告のしかた(あらまし)」も参考になります。ご不安な方は、早めに最寄りの税務署または税理士へお問い合わせください。

申告前に整えておきたい3つのこと(生前整理の視点から)

相続税の申告は、「正味の遺産額の把握」から始まります。この準備を生前から少しずつ行っておくことで、相続発生後の手続きの負担を大きく軽減できるとされています。生前整理アドバイザー2級(当センター代表・大久保亮佑)の視点から、申告前に整えておくと役立つ3つの項目を整理します。

(1)財産の一覧化(「何があるか」をリストに残す)

相続税の計算は、預貯金・不動産・有価証券・生命保険金・負債などを網羅的にリスト化することが前提となります。財産の種類や所在を把握していないと、相続発生後に調査だけで数週間〜数ヶ月を要することもあります。

生前整理の協会が推奨する「人生振り返りノート」には、財産・大切な人・これからの生活に関する記録欄があります。このノートの財産記録の部分が、申告書に記載する「財産の明細」の基礎情報として機能します。「エンディングノートに財産をまとめておく」という作業は、単なる終活の準備ではなく、ご家族の相続手続きを大きく助ける実践的な備えでもあります。

財産リストの作成には、生前整理チェックリストも参考にしてください。また、親の財産を把握する方法の記事では、具体的な財産確認の手順を整理しています。

(2)法定相続人の確認(戸籍謄本の取り寄せ)

基礎控除額の計算には法定相続人の確定が必要です。法定相続人の確認には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せる必要があります。認知・養子縁組・前婚の子がある場合などは、法定相続人の範囲が複雑になることもあります。

親が元気なうちに家族構成や過去の婚姻歴・縁組の有無などについて穏やかに話し合っておくことが、スムーズな相続手続きへのつながりとなります。

(3)10ヶ月という期限を意識した逆算スケジュール

相続開始から申告期限までの10ヶ月は、財産の調査・遺産分割協議・申告書の作成・納税のすべてをカバーします。「まだ時間がある」と感じていても、財産の種類が多かったり、相続人間の調整に時間がかかったりすると、あっという間に期限が近づくことがあります。

「まず財産リストをつくる」という一歩が、申告準備の最初のアクションとして最も効果的とされています。親が元気なうちから少しずつ財産を整理しておくことで、相続発生後に家族が慌てる状況を大きく減らすことができます。

相続の準備全体については、生前整理のはじめかた(総合ガイド)もご参照ください。

まとめ:相続税の基礎控除と申告要否の判断ポイント

この記事で解説した要点を整理します。

  • 基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」が一般的な計算式とされています(国税庁 No.4152)。
  • 正味の遺産額が基礎控除額以下であれば、原則として申告も納税も不要とされています。
  • 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を適用する場合は、税額が0円でも申告が必要とされています(国税庁 No.4205、No.4124)。
  • 申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」とされています。
  • 国税庁「申告要否判定コーナー」で事前シミュレーションが可能です(無料・匿名)。
  • 相続税申告の前提として、財産リストの作成が最も実践的な準備となります。

相続税の申告要否や税額については、ご家族の財産構成・法定相続人の構成によって異なります。本記事の内容はあくまでも一般的な情報提供であり、個別の判断には対応しておりません。具体的なご不明点は、税務署または税理士にご相談ください。

相続発生後に慌てないためにも、親が元気なうちから財産の一覧化を少しずつ進めておくことが、ご家族全員にとっての安心につながります。相続手続きの3ヶ月以内にやることの記事も、あわせてご参照ください。

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この記事の監修者

大久保 亮佑

生前整理アドバイザー2級/株式会社Kogera 代表取締役社長

株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」運営。実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。監修者プロフィール →

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