相続登記の義務化|実家を相続した後の手続きの順番

実家を相続することになったものの、何から手をつければいいのか分からない方へ。2024年4月1日から相続登記の申請が義務になり、期限を過ぎると過料の対象になります。名義を変えるまでは売ることも貸すこともできません。法務省・法務局の公表内容をもとに、手続きの順番と期限を整理しました。
実家を相続したら、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する
相続(遺言を含む)により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務付けられました。施行日は2024年(令和6年)4月1日です(法務省「相続登記の申請義務化について」、確認日:2026年9月18日)。
2024年4月1日より前に開始した相続で取得した実家も、相続登記をしていなければ義務化の対象です。期限は2027年(令和9年)3月31日まで。不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月以降の場合は、その日から3年以内となります。祖父母の代から名義がそのままという実家も、ここに含まれます。
さらに、遺産分割の話し合いがまとまった場合には、基本的な義務とは別に、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた所有権移転の登記を申請する義務が生じます。話し合いの進め方は遺産分割協議書の作り方で整理しています。
正当な理由がないのに相続登記を怠ると、10万円以下の過料の対象になる
正当な理由がないのに相続登記の申請義務を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象となります。ただし、いきなり過料になるわけではありません。登記官が義務違反を把握したときは、相当の期間を定めて申請するよう催告し、その期間内に正当な理由なく申請がなかった場合に、管轄の地方裁判所へ通知するという流れです(法務省「相続登記の申請義務化について」、確認日:2026年9月18日)。
法務省は「正当な理由」があると一般に認められる事情として、相続人が極めて多数で戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握に時間を要する場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われていて不動産の帰属が決まらない場合、義務を負う人自身に重病その他これに準ずる事情がある場合、配偶者からの暴力の被害者等で避難を余儀なくされている場合、経済的に困窮していて費用を負担できない場合の5つを挙げています。
遺産分割がまとまらないときは、相続人申告登記で3年の義務を果たせる
期限内の3年以内に相続登記を申請することが難しい場合、「相続人申告登記」という簡易な手続きで申請義務を果たせます。登記記録上の所有者について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを、不動産を管轄する法務局へ申し出る制度です(法務省「相続人申告登記について」、確認日:2026年9月18日)。
相続人申告登記には、特定の相続人が単独で申し出できる、押印・電子署名が不要、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定しなくてよい、登録免許税がかからない、という特徴があります。相続人が多く戸籍を集め切れていない段階でも、期限に間に合わせやすい仕組みです。
一方で、相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではありません。実家を売ったり抵当権を設定したりする場合には、別途、相続登記の申請が必要です。また、遺産分割に基づく相続登記の申請義務は、相続人申告登記では果たせません。あくまで「時間を稼ぐための手続き」と位置づけてください。
相続登記の必要書類は、戸籍の収集から始まる
相続登記の申請では、亡くなった方の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などを集め、法定相続人の範囲と法定相続分の割合を確定する必要があります。実家の相続で最も時間がかかるのが、この戸籍集めです。本籍地が何度も変わっている場合は、複数の市区町村に請求することになります。
集めた戸籍を一度束ねておくと、その後が楽になります。法務局の「法定相続情報証明制度」を使うと、相続人を一覧にした法定相続情報一覧図の写しの交付を受けられ、相続登記のほか金融機関の手続きにも使えます。申し出先は、亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった方名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所で、郵送でも申し出できます(法務局「法定相続情報証明制度について」、確認日:2026年9月18日)。
申請書の様式や記載例は法務局のページで公開されています。書き方や自分のケースで必要な書類は、管轄の法務局の手続案内か司法書士に確認してください。登記の手続きを代理できるのは司法書士・弁護士です。
親名義の不動産の見落としは、所有不動産記録証明制度で防ぐ
実家の相続で起きやすいのが、親名義の土地が他にもあったことに後から気づく「登記漏れ」です。2026年(令和8年)2月2日から、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧にして証明する「所有不動産記録証明制度」が始まりました(法務省「所有不動産記録証明制度について」、確認日:2026年9月18日)。
請求できるのは所有権の登記名義人本人と、その相続人その他の一般承継人です。全国どの法務局・地方法務局でも、書面またはオンラインで請求でき、書面の場合は郵送でも請求できます。手数料は書面請求で検索条件1件・1通あたり1,600円です。該当する不動産が無いという結果でも手数料はかかり、返却されません。
制度が作られた背景は、登記記録が土地や建物ごとに作られていて、特定の人が名義人になっている不動産を全国から抜き出す仕組みがこれまで無かったことにあります。農地や山林、私道の持分など、家族が把握していない土地が見つかることもあります。
相続登記を済ませてから、売る・住む・貸すを決める
相続した実家を売る場合も、貸す場合も、担保に入れる場合も、自分名義への相続登記が済んでいることが前提になります。買主や金融機関は登記簿で所有者を確認するため、名義が亡くなった親のままでは契約そのものが進みません。順番としては、戸籍の収集と遺産分割の話し合い、相続登記、そのうえで出口の検討となります。
出口の選び方は、相続人の人数、実家との距離、建物の状態、維持費の負担で変わります。売却・賃貸・解体・所有継続の比べ方は実家を相続したら|4つの選択肢で、価格の確かめ方は実家・空き家の不動産査定で整理しています。査定は複数社の金額と根拠を比べ、その場で契約せず、納得できなければ断って構いません。
相続税がかかるかどうか、誰がどの財産を取得するかといった判断は、税理士・弁護士・司法書士といった専門家に相談してください。法務局でも登記手続きの案内を受けられます。
まとめ
実家を相続したら、取得を知った日から3年以内の相続登記が義務です(2024年4月1日施行。それ以前の相続は2027年3月31日まで)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。間に合わないときは相続人申告登記で義務を果たし、親名義の不動産の見落としは所有不動産記録証明制度で確かめる。名義を整えてから、売る・住む・貸すを決める順番が安全です。
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