尊厳死宣言公正証書とは|作り方と費用

「延命治療を望まない気持ちを、きちんとした形で残しておきたい」と考えている方へ。尊厳死宣言公正証書は、その意思を公証人に聞き取ってもらい、公文書として残す方法です。この記事では、リビングウィルとの違い、医療現場での扱い、公証役場での作り方と必要なもの、費用、作ったあとの共有と書き直しをまとめました。
尊厳死宣言公正証書は、延命措置を望まない本人の宣言を公証人が聞き取って作る公文書
尊厳死宣言公正証書は、延命措置を差し控え、または中止してほしいという本人の宣言を公証人が聞き取り、その結果を公正証書にまとめたものです。日本公証人連合会は、公証人が自ら見聞きした事実を記録する「事実実験公正証書」の一種と説明しています。
日本公証人連合会によると、事実実験公正証書は原本が公証役場に保存され、公務員である公証人が作成した公文書として高度の証明力を持ちます(出典:日本公証人連合会「8 事実実験公正証書」、2026年10月1日確認)。
リビングウィルと尊厳死宣言公正証書の違いは、作る人と原本の残り方にある
リビングウィルと尊厳死宣言公正証書のいちばん大きな違いは、リビングウィルが本人が自分で書く書面であるのに対し、尊厳死宣言公正証書は公証人が本人の宣言を聞き取って作成し、原本が公証役場に残る点です。
項目 | 自分で書くリビングウィル | 尊厳死宣言公正証書 |
|---|---|---|
作る人 | 本人 | 公証人(本人の宣言を聞き取る) |
原本の保管 | 本人や家族 | 公証役場 |
費用 | 公的な手数料はない | 公証人手数料令に基づく手数料 |
書き直し | 本人が日付を入れて書き直す | 作成した公証役場に相談する |
人生会議(ACP)・リビングウィル・事前指示書の違いは終末期医療の意思表示|ACPとリビングウィルの違いで整理しています。公正証書にする前に考えを書き出してみたい方は、延命治療の意思表示書(無料テンプレート)も使えます。厚生労働省のガイドラインに沿って項目を並べた記録用のシートで、法的な効力のある書類ではありません。
尊厳死宣言公正証書を作っても、医療現場でその内容どおりになるとは限らない
尊厳死宣言公正証書を作成しても、医療現場でその内容どおりの対応が行われるとは限らないことを、日本公証人連合会自身が説明しています。理由として、医療現場では患者の指示に必ず従わなければならないとまではいまだ考えられていないこと、過剰な延命治療に当たるかどうかは医学的判断によらざるを得ない面があることを挙げています(出典:日本公証人連合会「Q3. 『尊厳死宣言公正証書』について、説明してください。」、2026年10月1日確認)。
厚生労働省のガイドラインも、本人による意思決定を基本としつつ、医療・ケア行為の開始・不開始や中止などは、医療・ケアチームが医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきだとしています(出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」、2026年10月1日確認)。尊厳死宣言公正証書は、医師への指示書というより、本人の意思をはっきり伝えるための記録と考えておくと安心です。どの治療を受けるかは、担当の医師に相談しながら考えてください。
尊厳死宣言公正証書は、内容の整理、公証役場との打合せ、公証人の前での宣言の順に作る
尊厳死宣言公正証書は、宣言したい内容を整理し、公証役場で公証人と打合せをしたうえで、公証人の前で本人が宣言する流れで作成します。日本公証人連合会は、事実実験公正証書の内容について公証人と事前に十分打合せをすることが必要だとしています。
- 延命措置についての考えと理由を書き出し、証書を託したい家族と話しておく
- 公証役場に相談する(公証業務の相談は無料。近くの役場は日本公証人連合会の公証役場一覧で探せる)
- 本人確認資料を準備する
- 公証人の前で宣言し、内容を確認する
- 正本・謄本を受け取り、手数料を現金またはクレジットカードで支払う
2025年10月1日の公証人法改正により、法務大臣が指定する公証人が作成する公正証書は原則として電磁的記録(PDF)になり、署名押印の代わりにタッチペンで電子サインをします(出典:日本公証人連合会「1 公正証書」、2026年10月1日確認)。
尊厳死宣言公正証書の作成で準備する本人確認資料
日本公証人連合会は、個人が本人として公正証書を作成する場合の確認資料として、次のいずれかを挙げています。
- 印鑑登録証明書(発行3か月以内)と実印
- 運転免許証と認印
- マイナンバーカードと認印
- パスポート、身体障害者手帳または在留カードと認印
公正証書の種類によっては特定の資料に限られる場合もあるため、尊厳死宣言公正証書で必要なものは打合せのときに公証役場で確かめてください(出典:日本公証人連合会「11 必要書類」Q1、2026年10月1日確認)。
尊厳死宣言公正証書の費用は公証人手数料令で決まり、1時間までごとに1万3000円が基本
尊厳死宣言公正証書の作成費用は政令である公証人手数料令で定められ、事実実験の手数料は要した時間の1時間までごとに1万3000円が基本です。根拠は公証人手数料令第26条で、法律行為でない事実に係る公正証書の手数料を「事実実験等に要した時間」で計算します(出典:e-Gov法令検索「公証人手数料令」、2026年10月1日確認)。
日本公証人連合会によると、休日や午後7時以降の事実実験は手数料の10分の5が加算され、正本・謄本の交付には紙の場合1枚300円などの手数料が別にかかります(出典:日本公証人連合会「12 手数料」、2026年10月1日確認)。総額は時間や枚数で変わるため、打合せの際に公証役場へ確認してください。
尊厳死宣言公正証書は、作ったあと家族とかかりつけ医に伝え、気持ちが変わったら見直す
尊厳死宣言公正証書は、作成しただけでは必要な場面で医師の目に届かないため、信頼できる家族に託し、かかりつけ医にも伝えておくことが大切です。日本公証人連合会も、尊厳死を迎える状況になる以前に担当医師等に証書を示す必要があるとして、信頼できる肉親等にあらかじめ託しておくのがよいとしています。
厚生労働省のガイドラインは、本人の意思は変化しうるものとして話し合いを繰り返すことが重要だとし、解説編は、話し合った内容を文書にまとめ、家族等と医療・ケアチームとの間で共有しておくことが重要だとしています(出典:厚生労働省 同ガイドライン解説編、2026年10月1日確認)。証書の内容を変えたくなったときは、作成した公証役場に相談してください。
まとめ
- 尊厳死宣言公正証書は、延命措置を望まない本人の宣言を公証人が聞き取って作る公文書
- リビングウィルとの違いは、公証人が作成し、原本が公証役場に保存される点
- 作成しても、医療現場でそのとおりになるとは限らない
- 公証役場との打合せ、本人確認資料の準備、公証人の前での宣言の順に作る
- 手数料は1時間までごとに1万3000円が基本。総額は公証役場で確認する
- 作ったら家族に託し、かかりつけ医にも伝える
手続きの具体的な進め方は公証役場で、治療の内容については担当の医師にご相談ください。公証役場で作る公正証書には、判断能力が十分なうちに自分で後見人を選んでおく任意後見契約もあります。
次の一歩:あなたの地域で調べる・試算する
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