相続・死後の手続き

遺言執行者とは|役割・選び方・いないときの手続き

遺言執行者とは|役割・選び方・いないとき

「親の遺言書に遺言執行者として自分の名前が書かれていた」「遺言書はあるのに、手続きを進める人が決まっていない」と困っている方へ。遺言執行者の役割、なれない人、指定の方法、いないときの家庭裁判所への選任申立て、報酬と辞任・解任のルールを、民法の条文と裁判所の公表情報で整理しました。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理など遺言の執行に必要な一切の行為をする権利と義務を持つ人

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つ人です(民法1012条1項。出典:e-Gov法令検索「民法」、2026年9月30日確認)。裁判所も、遺言執行者を「遺言の内容を実現する者」と説明しています(出典:裁判所「遺言執行者の選任」、2026年9月30日確認)。

遺言執行者が権限内で、遺言執行者であることを示して行った行為は、相続人に対して直接に効力を生じます(民法1015条)。法務省によると、2019年7月1日に原則施行された相続法の改正で、遺言執行者の権限が明確化されました。関係する条文は民法1007条と1012条〜1016条です(出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」・同ページ掲載の相続法改正の概要(PDF))。

遺言執行者の主な仕事は、相続人への遺言内容の通知、相続財産の目録の作成、遺贈の履行、登記や預貯金の手続き

遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちに任務を始め、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知します(民法1007条)。民法が定める遺言執行者の主な仕事は次のとおりです。

  • 相続財産の目録を作成して相続人に交付する。相続人から請求があれば、相続人の立会いのもとで作成するか、公証人に作成させる(民法1011条)
  • 遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者だけが行える(民法1012条2項)
  • 特定の財産を特定の相続人に承継させる遺言(特定財産承継遺言)があるときは、その相続人が登記などの対抗要件を備えるために必要な行為ができる(民法1014条2項)
  • 特定財産承継遺言の対象が預貯金のときは、払戻しの請求ができる。解約の申入れは、その預貯金の全部が遺言の対象である場合に限られる(民法1014条3項)

遺言執行者には、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(民法644条)や、事務の処理状況を報告する義務(民法645条)などの委任の規定が準用されます(民法1012条3項)。不動産の名義変更に必要な書類は相続登記の必要書類、預貯金の手続きは銀行口座の凍結解除に必要な書類で解説しています。

遺言執行者になれないのは未成年者と破産者で、遺言執行者を複数にすることや、第三者に任務を行わせることもできる

民法1009条は、未成年者と破産者は遺言執行者となることができないと定めています。遺言者は、一人または数人の遺言執行者を指定できます(民法1006条1項)。

遺言執行者が数人いるときは、任務の執行は過半数で決め、保存行為は各遺言執行者が単独でできます(民法1017条)。遺言執行者は自分の責任で第三者に任務を行わせることができますが、遺言に別段の意思が示されていればそれに従います(民法1016条1項)。誰を指定するかは、弁護士・司法書士に相談して決めると安心です。

遺言執行者は遺言者が遺言で指定するか、指定を第三者に委託し、指定された人が就職を承諾して任務が始まる

遺言執行者は、遺言者が遺言で指定するか、指定を第三者に委託して決めます(民法1006条1項)。指定の委託を受けた人は、遅滞なく遺言執行者を指定して相続人に通知し、委託を辞退するときも遅滞なく相続人に通知します(民法1006条2項・3項)。

指定された人が引き受けるかどうか答えないときは、相続人などの利害関係人が相当の期間を定めて、承諾するかどうかを確答するよう催告できます。期間内に相続人へ確答がなければ、就職を承諾したものとみなされます(民法1008条)。遺言書の方式ごとの作り方は遺言書の書き方3方式で比べています。

遺言執行者がいないときや、いなくなったときは、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てられる

遺言執行者がないとき、またはなくなったときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任できます(民法1010条)。裁判所が公表している申立ての概要は次のとおりです(出典:裁判所「遺言執行者の選任」)。

項目

内容

申立人

利害関係人(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など)

申立先

遺言者の最後の住所地の家庭裁判所

費用

執行の対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる)

標準的な添付書類

遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本、遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票、遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し、利害関係を証する資料

申立先の家庭裁判所に遺言書の検認の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は、戸籍謄本と遺言書の写しの添付は不要とされています。

遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分など遺言の執行を妨げる行為ができず、違反した行為は原則として無効になる

遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません(民法1013条1項)。違反して行った行為は無効ですが、無効であることを善意の第三者に対抗することはできません(民法1013条2項)。

相続人の債権者(相続債権者を含む)が相続財産について権利を行使することは妨げられません(民法1013条3項)。遺言が特定の財産だけに関するものであれば、1011条から1013条までの規定はその財産についてのみ適用されます(民法1014条1項)。誰が相続人になるかは法定相続人の範囲と順位で確認できます。

遺言執行者の報酬は遺言で定めた額になり、遺言に定めがなければ家庭裁判所が相続財産の状況などから定めることができる

家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができます。遺言者が遺言で報酬を定めたときは、遺言の定めによります(民法1018条1項)。

遺言の執行に関する費用は相続財産の負担とされ、費用の負担によって遺留分を減らすことはできません(民法1021条)。

遺言執行者は正当な事由があれば家庭裁判所の許可を得て辞任でき、任務を怠ったときは利害関係人が解任を請求できる

遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て任務を辞することができます(民法1019条2項)。遺言執行者が任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は家庭裁判所に解任を請求できます(民法1019条1項)。

辞任や解任で遺言執行者がいなくなったときも、家庭裁判所に選任を申し立てられます(民法1010条)。

遺言執行者についてよくある質問

Q. 遺言執行者に指定されたら、必ず引き受けなければなりませんか?

民法1007条は、遺言執行者が就職を承諾したときに任務が始まると定めています。ただし、相続人などから催告を受けて期間内に確答しないと、承諾したものとみなされます(民法1008条)。引き受けるか迷うときは、早めに弁護士・司法書士に相談してください。

Q. 遺言執行者の報酬の相場はいくらですか?

民法には報酬額の基準はありません。遺言で定めた額か、遺言に定めがなければ家庭裁判所が相続財産の状況などから定めます(民法1018条1項)。専門家に依頼する場合の費用は、依頼先に確認が必要です。

まとめ

  • 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理など執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つ
  • 未成年者と破産者は遺言執行者になれない。遺言で指定するか、指定を第三者に委託する
  • 遺言執行者がいないときは、利害関係人が遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に選任を申し立てる。収入印紙は遺言書1通につき800円分
  • 報酬は遺言の定めか家庭裁判所の決定により、辞任には家庭裁判所の許可が必要

遺言で実家を受け継ぐ、または売却して分ける予定がある場合は、実家の価値を査定で確かめておくと、相続人どうしで話し合うときの目安になります。遺言の解釈や執行の進め方に迷ったときは、弁護士・司法書士に相談してください。

記事を読んだら、お住まいの市区町村の具体的な情報や費用の目安を確かめてみましょう。

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この記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。相続・年金・税・登記などの手続きは、 個別の状況や法改正によって取り扱いが異なります。具体的な手続きや判断は、各市区町村窓口・ 年金事務所・法務局・税務署、および司法書士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。