相続・死後の手続き

法務局の自筆証書遺言保管制度|手順・費用・注意点

法務局の自筆証書遺言保管制度|手順・費用

手書きの遺言書を法務局に預けられる「自筆証書遺言書保管制度」は、手数料が1通3,900円で、相続が始まった後の家庭裁判所の検認も要らなくなります。その代わり、本人が予約を取って窓口へ出向く必要があり、用紙の余白やページ番号にも決まりがあります。預ける前の準備から、家族が遺言書の中身を受け取るまでを、法務省の案内と条文で順に追います。

自筆証書遺言書保管制度は、手書きの遺言書を法務局が原本と画像データで長期間保管する制度

自筆証書遺言書保管制度は、遺言者が自分で手書きした遺言書を、法務大臣が指定した法務局(遺言書保管所)に預ける制度です(遺言書保管法1条・2条・4条、2026年9月30日確認)。法務省によると制度は令和2年7月10日に始まり、原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間管理されます(出典:法務省「遺言書保管制度とは?」)。

保管の申請時には遺言書保管官が自筆証書遺言の形式を外形的にチェックし、紛失や改ざんも防げます。相続開始後の家庭裁判所の検認は不要です(遺言書保管法11条)。ただし、法務局は遺言の内容の相談には応じず、法務省は保管制度が遺言書の有効性を保証するものではないと明記しています。無効になる典型例は遺言書の効力|できること・無効になるケース、3方式の違いは遺言書の書き方3方式で整理しています。

自筆証書遺言書保管制度の手数料は、保管申請が1通3,900円で、撤回と変更の届出は無料

自筆証書遺言書保管制度の手数料は、遺言書を預ける保管申請が1通につき3,900円で、保管年数によって増えることはなく、すべて収入印紙で納めます(遺言書保管法12条2項、出典:法務省「手数料」)。

手続き

手数料

保管の申請(遺言者)

遺言書1通につき3,900円

遺言書の閲覧

モニター1回1,400円/原本1回1,700円

遺言書情報証明書(相続開始後)

1通1,400円

遺言書保管事実証明書(相続開始後)

1通800円

保管の申請の撤回、住所などの変更の届出

不要

預けた遺言書の内容を変えたいときは、撤回して書き直し、あらためて保管を申請する方法を法務省は推奨しており、再申請にも3,900円がかかります。

法務局に預ける遺言書は、民法968条の要件に加えて、A4・余白・片面という保管制度の様式に合わせる

法務局に預けられる遺言書は、民法968条の要件を満たし、法務省令の様式に従って作成された、封をしていないものに限られます(遺言書保管法4条2項)。民法968条では、遺言者が全文・日付・氏名を自書して印を押し、財産目録だけはパソコン作成や通帳のコピー添付でもよいものの、その全ページに署名・押印します(出典:e-Gov法令検索「民法」)。日付は「○年○月吉日」のように特定できない書き方は不可です。

保管制度の様式は次のとおりです(出典:法務省「遺言書の様式等についての注意事項」)。

項目

ルール

用紙・記載面

A4サイズで、文字が読みづらくなる模様や彩色がないもの。片面のみに書く(財産目録も同じ)

余白

上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上。余白に1文字でもはみ出すと書き直し

ページ番号

「1/2、2/2」のように総ページ数が分かる形で余白の内側に書く。1枚だけなら不要

とじ方

ホチキスでとじず、封筒にも入れない

筆記具・氏名

消えにくいボールペンなどを使い、氏名は戸籍どおりに書く

1枚だけの遺言書のページ番号を不要にしたのは、令和8年3月2日施行の省令改正です。色分けは、遺言書情報証明書が白黒で出力されるため、保管制度では勧められていません。遺言の内容や書き方は、弁護士・司法書士などの専門家に相談してください。

自筆証書遺言書保管制度の保管申請は、保管先の決定、申請書の作成、予約、本人の出頭の順に進む

自筆証書遺言書保管制度の保管申請は、遺言書を書き終えた後に保管先を決め、申請書を作り、予約を取ってから遺言者本人が窓口へ出向く流れです(出典:法務省「遺言者の手続」・同「予約」)。

  1. 保管先を決める:住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所から選ぶ。2通目以降は最初に申請した遺言書保管所に限られる(遺言書保管法4条3項)
  2. 保管申請書を作る:様式は法務省のサイトや法務局の窓口で入手する。遺言書に書いた受遺者・遺言執行者の氏名と住所も記載する。一部の遺言書保管所(39都道府県・68か所)ではメールでの事前チェックを試行している
  3. 予約を取る:専用の予約サイトなどで本人が予約する。30日先まで取れ、当日の予約はできない。夫婦で1通ずつ預けるなら1人1件ずつ予約する
  4. 本人が出向いて申請する:代理人による申請や郵送での申請はできない(同法4条6項)。持参するのは、遺言書、保管申請書、住民票の写し等(本籍と筆頭者の記載があり、マイナンバーや住民票コードの記載がないもの)、顔写真付きの身分証明書、3,900円分の収入印紙の5点
  5. 保管証を受け取る:遺言書保管所の名称と保管番号が記載された保管証が渡される。保管証は再発行されない

自筆証書遺言書保管制度は本人が窓口へ行けないと使えず、預けた後の書き直しや住所の変更にも手続きが要る

自筆証書遺言書保管制度は、保管申請も撤回も遺言者本人の出頭が前提のため、預けた後の変化まで見越しておくと安心です(出典:法務省「よくあるご質問」)。

  • 本人が出頭できない:病気などで遺言書保管所へ行けない場合は利用できない(付添人の同伴は可)。法務省は、公正証書遺言なら公証人が出張して作成できると案内している
  • 書き直したい:保管の申請の撤回は、原本を保管している遺言書保管所でだけ本人が行い、遺言書が返還される。撤回は遺言の効力とは関係がない
  • 住所や氏名が変わった:遺言者や受遺者・遺言執行者などの氏名・住所が変わったら変更の届出をする。全国どこの遺言書保管所でもでき、郵送でも届け出られる。手数料はかからない

法務局に遺言書を預けたことを家族に伝える手段は、保管証の写しを渡すことと、死亡時に届く指定者通知

法務局に遺言書を預けたことを家族に伝える手段として、法務省は保管証の写しを渡すことを勧めており、遺言者が希望すれば死亡時に法務局から知らせが届く「指定者通知」も使えます(出典:法務省「通知」)。

指定者通知は、法務局が戸籍担当部局との連携で遺言者の死亡を確認したときに、あらかじめ指定された人(3名まで)へ届きます。ただし、通知を受けた人でも、推定相続人や遺言書に書かれた受遺者・遺言執行者などでなければ、遺言書の閲覧や証明書の請求はできません。また、相続人などの誰か1人が遺言書を閲覧したり遺言書情報証明書を受け取ったりすると、ほかの相続人などにも「関係遺言書保管通知」が届きます。受遺者や遺言執行者の手続きには遺言者の住所・本籍・戸籍の筆頭者の氏名が必要になるため、伝えておくよう法務省は呼びかけています。遺言執行者の役割は遺言執行者とはで解説しています。

相続が始まったら、家族は遺言書保管事実証明書で遺言書の有無を確かめ、遺言書情報証明書で内容を受け取る

遺言者が亡くなった後、家族は全国どこの遺言書保管所にも証明書を請求でき、郵送でも手続きできます(出典:法務省「相続人等の手続」・同「証明書について」)。

  1. 遺言書保管事実証明書:自分に関係する遺言書が保管されているかどうかを証明する。親が遺言書を作ったか分からないときの確認に使える
  2. 遺言書情報証明書:遺言書の画像がすべて印刷された証明書で、遺言書原本の代わりに相続登記や銀行の相続手続に使える。検認は不要
  3. 遺言書の閲覧:モニターでの閲覧は全国どこの遺言書保管所でも、原本の閲覧は原本を保管している遺言書保管所でだけでき、予約が要る

預けられた遺言書の原本は、相続人であっても返してもらえません。遺言書情報証明書の請求には、法定相続情報一覧図の写しがなければ、遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票の写しを添えるのが基本です。一覧図の写し(住所記載あり)を使うと審査期間が短くなると法務省は案内しています。

自宅などで見つかった自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です(遺言書の検認とは|手続きの流れ・費用・必要書類)。遺言で実家を誰に託すかを考える段階では、実家のいまの価値を査定で確かめておくと、家族と話し合う材料になります。自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶか、遺言に何を書くかは、弁護士・司法書士に相談してください。

記事を読んだら、お住まいの市区町村の具体的な情報や費用の目安を確かめてみましょう。

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この記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。相続・年金・税・登記などの手続きは、 個別の状況や法改正によって取り扱いが異なります。具体的な手続きや判断は、各市区町村窓口・ 年金事務所・法務局・税務署、および司法書士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。