相続・死後の手続き

遺言書の効力|できること・無効になるケース・期限

遺言書の効力|できること・無効になるケー

「親が書いた遺言書に本当に効力があるのか」「何年も前の遺言書でも使えるのか」と迷っている方へ。遺言書の効力は遺言者が亡くなった時に生じ、民法の方式に従っていない遺言は効力を持ちません。民法の条文と裁判所・法務省・日本公証人連合会の説明をもとに、遺言でできること、無効になりやすい例、期限を整理します。

遺言書の効力は、民法の方式に従った遺言に死亡の時から生じる

遺言書の効力とは、民法の方式に従って作られた遺言の内容が、遺言者の死亡の時から法的な効力を持つことです。民法960条は「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定め、967条は普通の方式を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つとしています。

民法985条は「遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる」と定めています。日本公証人連合会は、方式に従わない遺言は全て無効で、生前の発言や録音・録画は遺言として法律上の効力がないと説明しています。

遺言でできることは、相続分の指定・遺贈・認知など民法が定める事項

遺言でできることは、相続分や遺産の分け方の指定、相続人以外への遺贈、子の認知、遺言執行者の指定など、民法が遺言ですることを認めている事項です。

遺言でできること

条文の内容

根拠

相続分の指定

共同相続人の相続分を定め、または第三者に委託できる

民法902条

分割方法の指定・分割の禁止

分割の方法を定めるほか、相続開始から5年以内の期間で分割を禁じられる

民法908条

遺贈

財産の全部または一部を処分できる

民法964条

認知

遺言によってもできる

民法781条2項

推定相続人の廃除

遺言執行者が家庭裁判所に請求する

民法893条

未成年後見人の指定

最後に親権を行う者が指定できる

民法839条

遺言執行者の指定

1人または数人を指定できる

民法1006条

日本公証人連合会は、内縁の妻には相続権がないため、財産を残したい場合は遺言をしておく必要があると説明しています。どの事項をどう定めるかは、公証人や弁護士・司法書士に相談してください。

遺言書が無効になりやすいのは、方式の欠け・共同遺言・遺言能力の欠如

遺言書が無効になりやすいのは、自筆証書遺言の要件が欠けている場合、2人以上が同じ証書で遺言をした場合、遺言をする時に遺言能力がなかった場合です。

自筆証書遺言は、全文・日付・氏名の自書と押印が要件

民法968条1項は、遺言者が「その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定めています。財産目録は自書不要ですが、毎葉に署名し印を押します(同条2項)。訂正などの変更も、場所を示して変更した旨を付記し、署名して印を押さなければ効力を生じません(同条3項)。

日本公証人連合会は、財産目録以外の全文をパソコンで作ったり第三者に書いてもらったりすると遺言が無効になると説明しています。法務省の自筆証書遺言書保管制度の様式の説明でも、「○年○月吉日」のような日付は不可とされています。方式ごとの書き方は遺言書の書き方3方式で解説しています。

夫婦でも、2人で1通の遺言書を作ることはできない

民法975条は「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」と定めています。夫婦がそれぞれ遺言を残すときも、1人ずつ別の遺言書を作ります。

遺言ができるのは15歳からで、遺言をする時の能力が必要

民法961条は「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」と定め、963条は遺言をする時にその能力を有しなければならないとしています。日本公証人連合会は、判断能力がなくなってしまえば、もう遺言はできないと説明しています。

日本公証人連合会は、財産を受け継ぐとされた相続人が遺言者より先に亡くなると、その部分は無効になるとも説明しています。一方、公正証書遺言は方式の不備で無効になるおそれはないとしています。個別の有効・無効の判断は、弁護士に相談してください。

遺言書が複数あるときは、抵触する部分について後の遺言が優先する

遺言書が複数あるときは、前の遺言と後の遺言で内容が食い違う部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。撤回したものとみなされるのは、抵触する部分に限られます。

遺言者はいつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます(民法1022条)。遺言者が故意に遺言書を破棄した部分も、撤回したものとみなされます(民法1024条)。日本公証人連合会は、撤回や変更は新たな遺言の形式でする必要があり、自筆証書か公正証書かの種類は問わないと説明しています。どの遺言書が優先するか迷うときは、弁護士に相談してください。

遺留分を侵害する遺言には、侵害額に相当する金銭を請求できる

遺留分を侵害する遺言について民法が定めているのは、遺留分権利者が、遺贈などで財産を受けた人に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できる仕組みです(民法1046条1項)。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に民法1042条が認める取り分で、遺留分を算定するための財産の価額に対し、直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外は2分の1です。相続人が数人いるときは、これに各自の法定相続分を掛けます。法定相続分は法定相続人の範囲と順位・相続分で整理しています。

遺留分侵害額の請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年、相続開始の時から10年で消滅します(民法1048条)。請求の可否や金額は、弁護士に相談してください。

検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではない

家庭裁判所の検認は、遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きで、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。裁判所は、検認を「相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに」、遺言書の形状や日付、署名などを明確にする手続きと説明しています。

民法1004条は、遺言書の保管者や見つけた相続人が、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求するよう定め、公正証書遺言には適用しないとしています。検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で開封したりした者は、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。

法務局の自筆証書遺言書保管制度で保管された遺言書も検認は不要ですが、法務省は、この制度が保管された遺言書の有効性を保証するものではないと明記しています。

遺言書の期限は、効力が生じる時と相続後の手続きの期間で分けて見る

遺言書の効力に関わる期限は、効力が生じる時期と、相続が始まった後の検認や遺留分侵害額の請求などの期間に分けると整理しやすくなります。

項目

時期・期間

根拠

効力が生じる時

遺言者の死亡の時(停止条件付きの遺言には例外あり)

民法985条

撤回

遺言者はいつでもできる

民法1022条

検認の請求

相続の開始を知った後、遅滞なく

民法1004条

遺留分侵害額の請求

知った時から1年、相続開始から10年で消滅

民法1048条

法務局での保管

原本は遺言者死亡後50年間

法務省

公正証書遺言の保存

遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または生後170年間

日本公証人連合会

書いてから年月がたった遺言書について、日本公証人連合会は、撤回や変更はいつでも何回でもでき、財産の内容が大きく変わったときなどは書き直した方がよい場合が多いと説明しています。亡くなった親の古い遺言書の扱いに迷うときは、弁護士・司法書士に相談してください。

遺言書の効力でよくある質問

Q. エンディングノートに遺言の効力はありますか?

エンディングノートは民法の遺言の方式を前提にしたものではないため、財産の分け方を書いても遺言としての効力は原則として生じません(民法960条)。違いはエンディングノートとは?遺言書との違いで解説しています。

Q. 遺言書があれば、遺産分割協議は要りませんか?

日本公証人連合会は、遺言のうち無効となった部分は、相続人の間で改めて遺産分割協議をしなければ帰属が決まらないと説明しています。協議の書類は遺産分割協議書の雛形と作り方で解説しています。

まとめ

  • 遺言は民法の方式に従う必要があり、効力は遺言者の死亡の時から生じる
  • 方式の欠け・共同遺言・遺言能力の欠如は無効になりやすく、複数の遺言書は抵触する部分で後の遺言が優先する
  • 遺留分の侵害は金銭の支払請求の仕組みで、検認は有効・無効を判断する手続きではない

遺言書の内容を確かめたら、実家などの不動産をどう分けるかの話し合いに進みます。不動産の今の価値を把握しておくと、分け方や遺留分を考える材料になります。

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この記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。相続・年金・税・登記などの手続きは、 個別の状況や法改正によって取り扱いが異なります。具体的な手続きや判断は、各市区町村窓口・ 年金事務所・法務局・税務署、および司法書士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。