相続・死後の手続き

相続財産清算人とは|選任が必要なとき・費用・流れ

相続財産清算人とは|選任が必要なとき・費

「相続人が全員、相続放棄をして、亡くなった親族の家が空き家のまま残っている」「貸したお金を返してもらいたいのに、相続する人がいない」と困っている方へ。相続財産清算人の役割、選任が必要になる場面、申立ての費用、国庫に帰属するまでの流れを、裁判所・法務省・e-Gov法令検索の公表情報で整理しました。

相続財産清算人は、相続人がいるか明らかでないときに家庭裁判所が選び、借金の支払いなどの清算をして残った財産を国庫に帰属させる人

相続財産清算人は、相続人のあることが明らかでないときに、利害関係人または検察官の申立てで家庭裁判所が選任する人です。亡くなった人の債権者などに債務を支払って清算し、清算後に残った財産を国庫に帰属させます(出典:裁判所「相続財産清算人の選任」、2026年9月30日確認)。

民法は、相続人のあることが明らかでないとき、相続財産そのものを法人とし(民法951条)、家庭裁判所が相続財産の清算人を選任しなければならないと定めています(民法952条1項。出典:e-Gov法令検索「民法」)。家や土地の売却のように、民法103条が定める権限を超える行為は、家庭裁判所の許可を得て行います(民法953条・28条)。

相続財産清算人の選任が必要になるのは、相続人全員が相続放棄した場合や相続人がいない場合に、家や借金などの相続財産が残っているとき

裁判所は、相続人の存在・不存在が明らかでないときには「相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる」と案内しています。相続財産清算人の選任を考える主な場面は次のとおりです。

  • 亡くなった人にお金を貸していた債権者が、相続財産から返済を受けたい
  • 遺言で特定の財産を受け取る人(特定遺贈を受けた人)が、その財産を受け取りたい
  • 生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人(特別縁故者)が、財産の分与を求めたい
  • 相続放棄をした人が占有している空き家を、引き渡して保存の責任を終えたい

相続財産清算人の選任を申し立てられるのは利害関係人と検察官で、申立先は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所

相続財産清算人の選任を申し立てられるのは、被相続人の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者などの利害関係人と、検察官です。申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です(出典:裁判所「相続財産清算人の選任」)。

空き家については、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)14条1項により市町村長も選任を請求できます。相続放棄をした人や近隣の住民が利害関係人にあたるかは個別の事情で判断されるため、弁護士・司法書士に相談してください。

相続財産清算人の申立て費用は収入印紙800円分・郵便切手・官報公告料5,582円で、管理費用が不足しそうなときは予納金を求められることがある

裁判所が公表している相続財産清算人の選任の申立て費用は、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です。

費用

金額・納め方

収入印紙

800円分

連絡用の郵便切手

裁判所ごとに異なる。保管金として納付することもできる

官報公告料

5,582円。家庭裁判所の指示があってから納める

予納金

管理費用や清算人の報酬に不足が出る可能性がある場合に、相当額を納めることがある

標準的な添付書類は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と父母などの戸籍謄本、住民票除票または戸籍附票、不動産登記事項証明書や通帳の写しなど財産を証する資料、利害関係を証する資料です。

相続財産清算人の選任後は、選任と相続人捜索の公告、債権の申出の公告、特別縁故者への分与を経て、残った財産が国庫に帰属する

相続財産清算人が選任された後の手続きは、民法952条から959条に沿って次の順で進みます。

  1. 家庭裁判所が、清算人を選任したことと、相続人がいれば権利を主張すべきことを公告する。期間は6か月以上(民法952条2項)
  2. 清算人が、すべての相続債権者と受遺者に、2か月以上の期間を定めて請求の申出をするよう公告する。期間は1の公告期間内に満了する(民法957条1項)
  3. 1の期間内に権利を主張する相続人がいなければ、相続人や、清算人に知られなかった債権者などは権利を行使できなくなる(民法958条)
  4. 特別縁故者は、1の期間の満了後3か月以内に請求し、家庭裁判所が相当と認めれば財産の全部または一部の分与を受けられる(民法958条の2)
  5. 処分されなかった財産は国庫に帰属する(民法959条)

法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(令和8年4月版)によると、改正前は3つの公告を順に行い、権利関係の確定に最低でも10か月かかっていましたが、2023年4月1日施行の改正で公告を同時に進められるようになり、最低必要な期間は合計6か月に短縮されました。条文が定めるのは公告期間の下限で、家や土地の売却にかかる期間は含まれていません。

相続放棄した人も、放棄の時に家を現に占有していれば、相続財産清算人に引き渡すまで保存義務を負う(民法940条)

相続放棄をした人は、放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意でその財産を保存しなければなりません(民法940条1項)。法務省は、法定相続人全員が放棄した場合の引渡し先を相続財産清算人と説明しています。

全員が放棄した実家に同居していた、鍵を預かっていたといった場合は、相続財産清算人の選任まで保存の責任が続く可能性があります。保存義務の範囲や解体費用の負担は相続放棄した家の解体費用と管理義務は誰が負うか、放棄の手続きと3か月の期限は相続放棄の必要書類と期限で解説しています。

空き家の管理が問題になるときは、市町村長も空家法14条にもとづき、相続財産清算人の選任などを裁判所に請求できる

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)14条は、市町村長が空き家の適切な管理のため特に必要があると認めるときに、家庭裁判所に相続財産清算人の選任や不在者財産管理の命令(民法25条1項)を、地方裁判所に所有者不明建物管理命令(民法264条の8第1項)などを請求できると定めています(出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)。不在者財産管理人は、所有者が従来の住所を去った場合の制度で、相続財産清算人とは対象が異なります。

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある空き家などは「特定空家等」にあたり、市町村長が助言・指導や勧告をすることができます(空家法2条2項・22条)。基準は特定空き家とは|4基準と固定資産税6倍になる条件にまとめています。近隣の空き家で困っている場合は、市区町村の空き家担当窓口に状況を伝える方法もあります。

相続放棄をせずに家を相続してから手放す場合は、売却や査定のほか、令和5年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度(法務省)も選択肢です。相続財産清算人による国庫帰属とは別の制度で、違いは相続土地国庫帰属制度とはで比べています。

相続財産清算人についてよくある質問

Q. 相続財産管理人と相続財産清算人は何が違いますか?

相続人のあることが明らかでない場合の「相続財産管理人」が、2023年4月1日施行の改正で「相続財産清算人」に名称変更されました。改正後の民法897条の2には、相続財産の保存のための「相続財産の管理人」が別に定められています。

Q. 相続財産清算人の予納金はいくらですか?

裁判所のページに予納金の金額は示されていません。管理費用や清算人の報酬に不足が出る可能性がある場合に相当額を納めることがあるとされ、金額は申立先の家庭裁判所に確認が必要です。

Q. 特別縁故者とはどのような人ですか?

民法958条の2は、被相続人と生計を同じくしていた人、被相続人の療養看護に努めた人、その他被相続人と特別の縁故があった人を挙げています。分与を受けられるかは家庭裁判所が判断します。

まとめ

  • 相続財産清算人は、相続人がいるか明らかでないときに家庭裁判所が選び、清算後の財産を国庫に帰属させる
  • 申立ては利害関係人か検察官が最後の住所地の家庭裁判所に行う。空き家は市町村長も請求できる
  • 費用は収入印紙800円分・郵便切手・官報公告料5,582円で、予納金を求められることがある
  • 公告期間は6か月以上で、特別縁故者の請求はその満了後3か月以内

相続放棄を考えている段階なら、実家の価値を査定で確かめてから、放棄するか相続して手放すかを弁護士・司法書士に相談して決めてください。

記事を読んだら、お住まいの市区町村の具体的な情報や費用の目安を確かめてみましょう。

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この記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。相続・年金・税・登記などの手続きは、 個別の状況や法改正によって取り扱いが異なります。具体的な手続きや判断は、各市区町村窓口・ 年金事務所・法務局・税務署、および司法書士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

編集・運営:株式会社Kogera「生前整理支援センター ふれあいの丘」。 実家じまい・遺品整理・生前整理の進め方を、当事者とご家族の目線でわかりやすくお届けしています。