墓じまいしないとどうなる|放置した墓と無縁墓
「実家のお墓を継ぐ人がいない」「遠くて管理できず、墓じまいもしないまま放置している」と悩んでいる方へ。墓じまいは義務ではありませんが、管理料の支払いが止まり、名義を継ぐ人もいない状態が続くと、使用許可や契約が取り消され、最後は無縁墳墓として改葬されることがあります。条例と国の調査をもとに、その流れと今からできる選択肢を整理します。
墓じまいは義務ではなく、管理料を納めて名義を継ぐ人がいればお墓は使い続けられる
墓じまいをしなくても、墓地の管理料を納め、名義を継ぐ人がいる限り、お墓はそのまま使い続けられます。墓地、埋葬等に関する法律第5条が定めているのは遺骨を移すとき(改葬)の市区町村長の許可で、墓じまいの期限や義務は定めていません。
問題になるのは、名義人が亡くなったのに承継の手続きがされず、管理料の支払いも止まった状態が何年も続くときです。たとえば東京都霊園条例第19条は、使用者が亡くなったとき、祖先の祭祀を主宰する人が知事の許可を受けて使用者の地位を承継できると定めています。
管理料の滞納が続くと、墓地の使用許可や契約が取り消されることがある
管理料を長く納めないでいると、公営墓地では条例にもとづいて使用許可が、寺院墓地や民営霊園では使用規則や契約にもとづいて使用する権利が、取り消されることがあります。
都立霊園は、管理料を5年間納めないと使用許可の取消し対象になる
東京都霊園条例第21条は、知事が使用許可を取り消せる場合の一つに、同条例第13条の管理料を5年間納付しないときを挙げています。都立霊園を管理する東京都公園協会の案内でも、管理料を5年間滞納すると使用許可の取消対象になると明記され、令和5年度からは延滞金も徴収されています。
都立霊園の管理料は、一般埋蔵施設で1平方メートルあたり年810円(令和8年4月1日改定)で、毎年6月中頃に請求書が届きます(2026年9月29日確認)。
寺院墓地や民営霊園は、墓地の使用規則や契約書の定めで決まる
厚生労働省が平成12年に示した「墓地経営・管理の指針」と「墓地使用に関する標準契約約款」は、地方公共団体の墓地が使用許可という形をとる以外は、墓地の使用規則は実質的に契約約款だと説明しています。
標準契約約款のひな形では、催告しても一定年数の管理料が支払われないときに墓地の経営者が契約を解除できるとしつつ、年数は一概に決めにくく「1年では短すぎる」としています。何年の滞納で解除になるかは墓地ごとに異なるため、手元の使用規則や契約書を確かめ、分からないときは寺院や霊園の管理事務所にたずねてください。
縁故者が見つからないお墓は「無縁墳墓」として、官報と立札で1年間公告した後に改葬される
使用者や親族と連絡がつかないお墓は、墓地の管理者が縁故者を探したうえで、官報への掲載と立札による1年間の公告を経て、市区町村長の許可を受けて遺骨を別の場所へ移されます。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条は、死亡者の縁故者がないお墓を「無縁墳墓等」とし、その改葬の申請には、縁故者などに1年以内に申し出るよう官報に掲載し、お墓の見やすい場所の立札に1年間掲示して、申出がなかった旨を記載した書面などを添えると定めています。
何年放置すると無縁墳墓と判断されるかは、墓地によって異なる
総務省行政評価局の「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-」(令和5年9月)によると、縁故者がないと判断する目安は市町村で一律ではありません。
- 秋田県大仙市:管理料の滞納が3年程度で、住民票や戸籍で調べても縁故者が不明の場合
- 兵庫県神戸市:管理料の滞納が10年程度で、戸籍などで調べても縁故者が見つからない場合
- 兵庫県尼崎市:使用者の死亡から5年たっても承継の申出がない場合、または所在不明から10年たった場合
- 奈良県御所市:連絡を求める立札を設置し、5年連絡がなく墓参の形跡もない場合
総務省の報告書は、目安に当てはまるだけで直ちに無縁墳墓と判断されるわけではないとも注記しています。
都立霊園では、滞納から無縁改葬の完了まで長い年月がかかり、遺骨は八柱霊園の「無縁塚」に移される
総務省の報告書が紹介する東京都の手順では、管理料滞納の納付指導から縁故者調査の対象になるまでに約5年以上、縁故者調査から遺骨の改葬と墓石の撤去が終わるまでにおおむね4〜5年程度かかります。遺骨は骨壺に入れて都立八柱霊園の「無縁塚」に改葬され、墓石は原状回復工事の後に処分されます。
無縁改葬は縁故者がいないことを確かめる慎重な手続きです。同じ報告書は、改葬の直前にも墓参の形跡があったお墓を無縁として撤去した宗教法人について、調査を尽くさなかった過失を認めた平成26年の高松高等裁判所の判決も紹介しています。
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無縁墳墓は公営墓地のある市町村の約6割にあり、撤去の費用と手間が課題になっている
総務省の調査では、公営墓地・納骨堂を持つ765市町村のうち58.2%(445市町村)が、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む)と答えています。一方、平成28〜令和2年度の5年間に遺骨の移管や墓石の撤去に着手した市町村は6.1%(47市町村)にとどまりました。
東京都の例では、遺骨の改葬と墓石の撤去の費用は区画の面積や墓石の大きさによりますが、おおむね1区画40万〜200万円程度とされています。総務省の2回目のフォローアップ(令和8年4月3日)によると、厚生労働省は令和7年12月の事務連絡で、自治体が代執行で墓石を撤去した場合は、費用を徴収するために墓石を差し押さえて公売する方法が考えられると整理しました。
厚生労働省の標準契約約款のひな形にも、墓地の経営者が墓石を移して遺骨を改葬した場合、その実費を元の使用者や祭祀承継者に請求できる条項があります。墓じまいをせずに放置すれば費用がかからない、とは言い切れません。
お墓を継げないと分かったら、承継者・墓じまい・合葬墓のどれにするかを名義人が元気なうちに決める
子どもや親族がお墓を継げないと分かった段階で、承継者を決めておく、墓じまいをして遺骨を永代供養墓などへ移す、公営霊園の合葬墓へ移す、のどれにするかを名義人が元気なうちに決めておくと、お墓が無縁墳墓になるのを避けられます。
選択肢 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
承継者を決めて使い続ける | 親族の誰かが名義を継ぎ、管理料を納める | 墓地の承継手続きと管理料の額 |
墓じまいして永代供養墓などへ移す | 墓石を撤去し、改葬許可を受けて遺骨を移す | 撤去工事の見積もり、改葬先の費用 |
公営霊園の合葬墓へ移す | 承継者がいない使用者が合葬の施設へ移れる制度を使う | 制度の有無、申込資格、募集時期 |
東京都霊園条例第20条の2は、使用者からの申出があり、使用者が亡くなった後に地位を承継する人がいないと認めるときは、合葬埋蔵施設などへ施設を変更できると定めています。制度の詳しい条件は墓じまいの補助金|対象になる自治体と条件で整理しています。
墓じまいを選ぶ場合、手続きの順番は墓じまいの流れ(7ステップと改葬許可の取り方)、費用の内訳は墓じまいの費用|内訳・誰が払う・お金がないとき、改葬先の種類は永代供養の種類と費用相場で比べられます。誰がお墓を継ぐかで親族の話し合いがまとまらないときは、弁護士に相談してください。
墓じまいをしないとどうなるか、よくある質問
Q. 墓じまいをせずに放置すると、親族に費用が請求されますか?
請求されるかどうかは墓地の規則や契約で決まります。厚生労働省の標準契約約款のひな形には、経営者が撤去・改葬した実費を元の使用者や祭祀承継者に請求できる条項があります。まず使用規則を確かめ、請求に納得できないときは消費者ホットライン188や弁護士に相談してください。
Q. 何年管理料を払わないと無縁墓になりますか?
年数を定めた法律はありません。都立霊園は管理料を5年間納めないと使用許可の取消し対象になり、ほかの市町村の目安は滞納3年程度から10年程度までさまざまです(総務省 令和5年調査)。
まとめ
- 墓じまいは義務ではなく、管理料を納めて名義を継ぐ人がいればお墓は使い続けられる
- 管理料の滞納が続くと使用許可や契約が取り消され、縁故者がいなければ官報と立札で1年間公告した後に無縁墳墓として改葬される
- 放置すれば費用がかからないとは言い切れず、継げないと分かったら承継者・墓じまい・合葬墓のどれにするかを早めに決めておく
まずは手元の墓地の使用規則と管理料の納付状況を確かめ、家族でお墓の今後を話し合うところから始めてみてください。
次の一歩:あなたの地域で調べる・試算する
記事を読んだら、お住まいの市区町村の具体的な情報や費用の目安を確かめてみましょう。
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